じつは「山梨県」も他人ごとではない…「南海トラフ巨大地震」が引き起こす「あまりに甚大な被害」
人的被害は
そしてもちろん、その被害は人間にも及ぶ。引き続き、山梨県の調査を見ていきたい。 揺れによって建物が倒壊するということは、その中にいる人も無事ではない。あるいは、揺れによって火災が発生する可能性も低くない。運悪く、倒れてきた自動販売機などに巻き込まれてしまう人もいるだろう。その結果、死者・負傷者・要救助者が発生する。 もっとも被害が大きくなると想定される冬の早朝5時(風速8m/s)における予測結果によると、山梨県内での被害は死者数が3019人、負傷者数が16254人、要救助者数が9326人と見積もられている。その多くが、いずれも揺れによるものだ。 静岡や和歌山といった海沿いの地域に比べればまだ少ない数字だが、それでも被害は甚大であることがわかる。こうした調査結果から、「津波」が来ない場所でも、「揺れそのもの」への警戒を怠ってはいけないことがわかるだろう。
今から備えを
さらに、被害は発災後も続く。ライフラインに被害が及び、上下水道の機能支障、停電、ガスの停止といった事態に陥る可能性が高い。 交通も一部遮断されるため、物資の供給にも支障が生じる。 もちろん、自衛隊や消防などによる救援活動は迅速に行われると考えられるが、南海トラフ地震の場合は被害地域があまりに広いことから、すべての地域には十分な支援が届かない可能性もある。 そうなった場合、限られた物資で長い時間を過ごさなければならないことが予想される。 南海トラフ地震は、今後30年以内に70~80%と高い確率での発生が予想されている。正確な発生時期を予測することは困難だが、これまで100~150年周期で発生してきていることから、いずれ発生することは避けられないと考えたほうが良いだろう。 その時に備えるためには、今のうちからできることをしておく必要がある。たとえば、備蓄をしっかりとしておけば、ライフラインが復旧するまで耐えることができる。 あるいは、自宅の耐震を見直す、家具の配置などを変えるといった対策も有効だろう。 日本全国で20万人から30万人超の死者が出るとも予測されている南海トラフ地震。しかし、ひとりひとりが今のうちから対策をしておけば、その数字は減らすことができるはずだ。 今回、いわゆる「海なし県」であっても、南海トラフ巨大地震の脅威は変わらず存在するということを、山梨県の調査をもとに見てきた。 内陸の地域に住む方も、これを機に、あらためて防災について考えてみるきっかけとしてほしい。 さらに関連記事<「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う「衝撃的な事態」>では、内閣府が出している情報をもとに、広範に及ぶ地震の影響を解説する。
現代ビジネス編集部