「最古の宇宙」を激写せよ!「ノーベル賞級の発見」を狙う人工衛星の「スゴすぎる仕組み」
常識を覆す、人工衛星「COBE」の大活躍
しかし、晴れ上がってからの宇宙の様子ならば、光で観測することが理論的には可能です。これを最初にやろうとしたのが、「宇宙背景放射探査機COBE」でした。 1989年の11月にデルタロケットによって打ち上げられたこの人工衛星は、宇宙が不透明から透明に変わったその瞬間の様子を見ることを目的にしたものです。みなさんが、飛行機に乗っていて雲の中にいたとしましょう。雲から出た瞬間に後ろを向いたら、何が見えるでしょうか。雲の表面ですね。その雲の表面とはまさに、宇宙が不透明から透明になった境界です。これを厳密に測定することを目的に打ち上げられたのがCOBEなのです。 ただし、COBEは私たちの目に見える可視光ではなく、電波で宇宙を見る人工衛星です。電波で見るには理由があります。ビッグバンのとき火の玉だった宇宙の光が、いまは波長が長くなり、マイクロ波の電波になっているからなのです。なぜ長くなってしまったかといえば単純な話です。波の性質を持つ光を箱に入れて、その箱自体を2倍、3倍と大きくすると、光の波長も2倍、3倍と大きくなっていきます。同様に宇宙が膨張によって3000倍、4000倍と大きくなると、光の波長も3000倍、4000倍の波長になってしまうわけです。 ですから、宇宙創生から30万~40万年たった晴れ上がり直後は、雲の表面は可視光で光っていましたが、その後の膨張によってマイクロ波にまで波長が長くなってしまっているのです。それを、COBEでくわしく見ようというわけです。
COBEはどんな仕組みになっている?
COBEの後ろに見えているのが地球です。 地球からは雑音となる電波が来ますので、つねに地球に後ろを見せて、スカートのような覆いで電波をシャットアウトしています。それに加え、つねに太陽も見ないようにしています。COBEは極軌道を回る人工衛星で、北極の上から南極の上を回っているので、いつも太陽が横にある状態になっているのです。 電波を遮るスカートの中には、三つの装置があります。FIRAS、DIRBE、DMRという装置で、それぞれに役割があります。 まず、FIRASという装置は日本語では遠赤外絶対分光測光計といい、宇宙の果てからやってくる電波のスペクトルを正確に測定する装置で、どんな電波がどんな強さできているのかを測定します。この装置を使い、ジョン・C・マザーがリーダーとなって、「火の玉」の証拠となる電波を見つけたわけです。 それから、DIRBEは、日本語では拡散赤外背景放射実験装置という名称です。これは赤外線で宇宙全体を見ることができる装置ですが、たとえば宇宙の初期に光っていた星の光が、宇宙が膨張することによって引き伸ばされ、赤い方にずれる(赤方偏移)ので、その赤外線を見るものです。 三つめのDMRは、たった直径センチメートルほどの非常に小さく可愛らしい装置なのですが、われわれにとって最も重要な発見をしました(図「DMR」)。