「大谷翔平」前人未踏の大記録「50-50」達成も浮かぶ疑問…盗塁数が急増した「外的要因」に衝撃!
「大谷って盗塁する人だっけ」の声
日本時間9月20日、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平(30)はマーリンズ戦に1番・指名打者で出場し、MLB史上初の「50-50」(50本塁打、50盗塁)を達成。 《貴重なフォトを独占入手!》メジャーを撮り続けるカメラマンが見た”素顔の大谷翔平” 前人未到の偉業でさえ、大谷にとっては通過点に過ぎなかったのか。大谷は初回に三盗を決めて50盗塁、二回には二盗を決めて51盗塁とし、打っては六回に49号2ラン、七回に50号2ラン、九回には3打席連発となる51号3ランを放つなど大暴れ。わずか1試合で「48-49」から「51-51」に数字を伸ばした。 21日にはコロラド・ロッキーズ戦に「1番・指名打者」で出場し、4打数3安打2打点、1本塁打1盗塁を記録。更に記録を「52-52」に伸ばしている。 史上初の偉業達成も通過点にしか感じさせない大谷の規格外さに、日本、米国の各地で驚嘆とともに歓喜に沸いている。しかしこう感じた読者も少なくなかったのではないか。 「本塁打はともかく、大谷ってこんなに盗塁を決める選手だったっけ?」 昨季の大谷は20盗塁。大谷の実力に疑いの余地はないが、いくら今季は打者に専念しているとはいえ、51盗塁まで伸びるものなのだろうか。本記事ではあえて、大谷の実力以外の〝外的要因〟に注目した――。 外的要因としてまず触れざるを得ないのは、MBLの3つのルール改正だろう。 「昨季からピッチクロック、牽制回数制限が導入され、ベースサイズが大型化しました。ピッチクロックとは投球間の時間制限のことで、投手は走者がいる場合は18秒以内に投球動作に入らなければいけません(走者がいない場合は15秒)。 牽制回数制限は、投手が牽制もしくはプレートから足を外すことができるのは1打席につき2回までとするルール。3回目以降は走者をアウトにしなければボークとなり、走者は進塁するため、牽制球は事実上2球が限度になっています。 ベースサイズも約38センチ四方から約46センチ四方に拡大したことで、一二塁間、二三塁間の距離が約11.4センチ短くなりました。 これらのルール改正が影響してMLBの盗塁数は増加傾向にあります。ルール改正前の’22年はMLB全体の盗塁数は2486。改正後の昨季は3503と1000以上も増えています。今季も3427(日本時間21日時点)と、昨季と同等の水準で盗塁が量産されています」(スポーツ紙MLB担当記者) MLBに詳しいスポーツライターの友成那智氏は、ルール改正は大谷の盗塁数増加の追い風になっているとしつつも、それだけでは「52盗塁」は説明がつかないという。 ◆「50-50」はチームの協力がもたらした記録達成だった! 「新ルールが導入された昨季のMLB全体の盗塁成功率は80.2%。一方、大谷の盗塁成功率は76.9%に留まります。エンゼルス時代の大谷の盗塁成功率は、試行数の少ない’20年シーズンを除くと、55.0%~80.0%で推移していて、盗塁に関しては平凡という印象がありました。ところが今季の大谷は55回中51回成功で、92.7%という驚異的な盗塁成功率を記録しています(21日時点)」(友成氏) 大谷の盗塁成功率の急上昇の理由は何なのか。友成氏は外的要因としてドジャースの名伯楽の存在を挙げる。 「一塁ベースコーチのクレイトン・マカロー氏(44)です。彼は走塁指導のスペシャリストとして知られ、’21年にドジャースの一塁ベースコーチに就任しました。かつてのドジャースは、ホームランバッターを並べ、盗塁はあまり仕掛けないチームでした。 しかし、マカロー氏が来てからは盗塁も積極的に仕掛けてくるチームになりました。特筆すべきは成功率で、今季のドジャースの盗塁成功率は84.6%(日本時間21日時点)と、MLBのチームでも屈指の高さを誇ります。 試合中継を見ていると、マカロー氏と大谷がベンチで話している姿を頻繁に見ます。一塁へ出塁した際に、お互いのヘルメットをぶつけ合う〝ヘッド・バンプ〟も両者の関係性がうかがえますね。大谷は投手の変化球のタイミングで盗塁するシーンも目立ちますが、モーションを盗む能力は、マカロー氏との二人三脚で培われていると思います」 コーチだけではない。後続打者も、大谷の盗塁数増加に寄与しているという。友成氏が続ける。 「1番、大谷のあとは、2番、ムーキー・ベッツ(31)、3番、フレディ・フリーマン(35)と続きます。両者ともシーズンMVPの獲得経験のある強打者です。相手投手にとって、出塁した大谷の盗塁は気になるでしょうが、まずは彼らに意識を割かないといけない。 加えて、ベッツもフリーマンも、割とじっくり球を見るタイプという点もプラスに働いていると思います。早いカウントで打ってくる打者の場合は、盗塁を試みる機会が減りますし、盗塁が打者の邪魔をしかねない。選手によっては、自分が打つときにランナーがウロチョロするのを嫌う選手もいますからね。彼らはそういったことは気にしないタイプです。 大谷も2ボール0ストライクなど打者有利のカウントの際はまず走りません。打者を立てている。52盗塁というと、とにかく機会があれば盗塁を試みていると誤解されがちですが、大谷が自身の記録達成よりもチームの勝利を優先していることがわかります」 ルール改正、名指導者に心強いチームメイト。大谷のポテンシャルが最大限発揮される環境は整っている。大谷が次の伝説を打ち立てる日も、そう遠くはなさそうだ。 取材・文:芳賀 慧太郎
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