PTAを苦しめる「昭和の義務」 著者3人が背景と解決策を徹底解説
◇PTAマイナスイメージの原因は3本の「や」 山本 PTA問題を長年取材してきた大塚さんが、「これはひどい!」と感じた事例は何ですか? 大塚 最近だと「加入しないならお子さんに災害備品を渡せない」と伝えたPTAがあると聞き、びっくりしました。子どもの命にかかわる話ですよ。そもそも、そんな大事なものをなぜPTAに用意させているのか? あとは登下校の活動にまつわる保護者間のトラブルで「通学路を使うなと言われた」という話も聞いたことがあります。PTAはどれだけの権限を持っているのか(苦笑)。 岡田 会員・非会員で子どもに渡すものを変えるっていうのは、完全に企業サービスの発想ですね。財とサービスの交換じゃないですか、それじゃ。通学路については「こっちは学校の委託を受けてやってるんで」くらいの気持ちになっちゃっているのかもしれませんね。 山本 毎年春になると理不尽なPTAの実態が話題になりますが、同じような問題が続いてますよね。 大塚 いっぱいありますね。典型的なのが、いわゆる「免除の儀式」。PTAの役員や委員が「できない理由」をみんなの前で言ったり、紙に書いて提出したりしなければいけないというもの。本来は言う必要はないことです。 岡田 大仰に言えば、憲法21条違反なんですけどね。憲法は「結社の自由」を認めている。つまり結社しない自由も認めているんです。強制的にPTAの委員をさせるということは、自由の余地を認めないということ。人間は奴隷ではないと憲法に書いてあるのだから、憲法違反なんですよ。 山本 12年前、私が会長になった小学校のPTA規約には「会員はすべて平等の義務と権利を有する」とありました。「平等の義務」、苦しいことも平等にとも読める。調べると戦後、1954(昭和29)年に当時の文部省が作成した「小学校『父母と先生の会』(PTA)参考規約」に同じことが書いてあったんです。 大塚 PTAはもともと、米国で誕生したものです。19世紀末、2人の母親が始めた「母親の会」がもとになったといわれています。日本にPTAができたのは戦後。連合国軍総司令部(GHQ)が文部省を通じて、全国の学校にPTAを作らせたのです。日本の大人たちに民主主義を学ばせることを意図し、戦前の「学校後援会」(寄付や手伝いで学校を支える団体)からの脱却を図ったようですが、狙い通りにはいかなかった。PTAはできて間もない頃から、「学校後援会の看板のかけ替え」という指摘を受けてきました。