「フリーランス新法」は好きな仕事で生きる人々を救えるか? 収入が減っても幸福度は高い/マイナビ・元山春香さん
組織に属さず働く、弱い立場のフリーランスを保護するための「フリーランス新法」が2024年11月1日から施行される。 (調査結果)会社員の時とフリーランスとしての収入比較 フリーランスの人たちは、どのくらい新法に期待しているのか。就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年10月21日に発表した「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」によると、3人に1人が「法律を味方にできる」と期待する一方、5人に1人が「期待できない」と答えた。 元会社員でフリーランスという働き方に満足している人が6割を超える。もっと働きやすくなるにはどうしたらよいか。調査をまとめたマイナビの元山春香さんに聞いた。 ■増える「自由度」「幸福度」「自己肯定感」、減る「収入」「業務量」「ストレス」 厚生労働省の調査によると、フリーランスで働く人は462万人にのぼり、業種はIT関連やライター、配送業、芸能タレントなど多岐にわたる。 新法では、発注企業と業務委託された個人との取引適正化を進める。企業に業務内容や報酬額を書面やメールで明示させトラブルを防止。商品納入から60日以内の報酬支払いを求める。企業はハラスメントの防止や相談体制を整備する義務がある。また、育児や介護を続けながら働けるよう配慮しなければならない。 マイナビの調査(2024年8月23日~27日)はフリーランスとして働く20歳~69歳の1000人(独立系776人、副業系224人)が対象だ。 元会社員(正社員)でフリーランスとして独立している人に、働き方の違いを聞くと、(会社員時代より)増えた項目の上位に「仕事の進め方の自由度」「私生活の幸福度」「自己肯定感」が並んだ。対して、減った項目の上位に「収入」「業務量」「仕事上のストレス」が並び、「収入」以外の面では私生活が充実している様子がうかがえた【図表1】。 収入(年収)の増減は職種によってさまざまだ。具体的な金額をみると、「ITエンジニア・開発系」は平均で約73万円増加、一方、「編集・ライター・印刷系」は約95万円減少している【図表2】 働き方の満足度を聞くと、全体の6割以上(62.1%)が「満足」と回答。働き方に満足している人が多いことがわかる。興味深いことに、年収が一番減少している「編集・ライター・印刷系」の満足度が約7割(68.1%)と最も高い。【図表3】。 フリーランスとして働くうえでの不安は、やはり「収入に波がある・不安定」「収入額が少ない」「老後の心配」が上位に並んだ。直近1年間の最高月収は平均53.5万円、最低月収は平均11.3万円と、収入におおきに波がある結果に【図表4】。 さて、フリーランス新法にはどの程度期待を寄せているのか。 フリーランスとして独立し、業務委託で働いている人に、金額などの条件面で取引先と交渉できる余地があるかを聞くと、6割以上が「交渉の余地がある1」と答えた。しかし、2割近くが「交渉の余地がない」と答え、取引先に主張をすることが難しい人も一定数いる。 そこで、新法への期待感を聞くと、35.0%が「総合的な働きやすさの向上」に期待できると回答した。また、要素別では「契約トラブルの防止」(37.8%)への期待が最も高かった。しかし、「期待できない」とする回答も2~3割あった【図表5】。 個別の意見では、「発注先が有利なことに変わりはない」「法律があるからといって要望を主張したら、仕事がなくなりそう」といった声が多く、フリーランスが弱い立場である実態がわかる。