「フリーランス新法」は好きな仕事で生きる人々を救えるか? 収入が減っても幸福度は高い/マイナビ・元山春香さん
収入が減っても「好きな仕事で生きていけることに大満足」
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったマイナビ キャリアリサーチラボ研究員の元山春香さんに話を聞いた。 ――【図表1】の「会社員の時を比べたフリーランスの働き方」をみると、「自由度」「幸福度」「自己肯定感」が増え、「収入」「業務量」「ストレス」が減ったとあります。「収入」の面をのぞくと、いいことづくめですね。ズバリ聞きますが、フリーランスになって幸せになった人が多いということでしょうか。 元山春香さん 今回、正社員から独立して現在フリーランスとして働いている人に聞いています。満足しているスコアが62.1%ですから、独立によって全体としてポジティブな実感を得られた人が多い結果です。 自由回答でも「会社員として雇われる働き方に比べ、自由度が高く、自分の裁量で決めて働ける」「好きな仕事で生きていけることに大満足」「会社に出社する生活から解放された」「人間関係のストレスがないので、体調も良くなった」といったコメントがあがりました。 固定された働き方や、組織での人間関係・通勤にストレスを感じていた方々が、独立してより理想的な働き方を手に入れることができ、私生活の幸福感アップにもつながっていることがうかがえます。 ――現在70代の私も、定年後にフリーランスのライターをしているので、大いに共感しますね。 元山春香さん 60代の方々の「定年後に自分の好きな仕事に従事できる」「自分が頑張ってきた証が形になっている」といったコメントも印象的でした。会社員と違って定年がもうなく、60代以降のキャリアも裁量をもって決めることができることが幸福感や自己肯定感につながるのではと考えさせられました。
取引先の数や、軌道に乗るまでの時間が収入に影響
――ただ、現役世代で正社員を辞めてフリーランスになる場合、精神面では幸福度が増しても収入面での不安が一番の悩みという結果が出ていますね。 その収入の面ですが、「ITエンジニア系」がずば抜けて収入増になる反面、私のような「編集・ライター・印刷系」がガックリ減るのはどういう理由からでしょうか。 元山春香さん 収入の増減には、働き方や前職の経験・職種の稼ぎやすさなど複数の要因が考えられます。生のコメントは聴取していないため就業実態の回答データからの推察になりますが、ITエンジニア・開発系は年間取引数が平均2.9社で他職種と比べて少なく、年間収入が高めなことから1社あたりの報酬が高いことが想定されます。 また、前職でも同じ業務を行っていた人が6割を占めるからか、独立後、早くに軌道に乗った人が多いのが特徴です。実際、1年以内に軌道にのった人が6割近くいます。また、システム開発など専門的知識が必要な職種のため、報酬が高くなりやすいことも収入アップに影響していると考えられます。 一方で、編集・ライター・印刷系の職種は年間取引数が8.5社と多めですが、年間収入はITエンジニア系より低いことから1社あたりの報酬が少ないことが推察されます。 また、フリーランスとして軌道にのることに時間がかかる人が多いようです。実際、まだ軌道に載っていない、安定していない人が25%以上いることも、平均収入を下げる一因と考えられます。