トランプトレードはいつまで続くか?:危うさがあるドル高円安シナリオ:日銀追加緩和の時期にも影響
トランプトレードの持続性が日銀の追加利上げ時期に影響か
トランプトレードがいつ大きく見直されるかは予想が難しいが、早ければトランプ政権が発足する前の今年中にも、それは起こりうるのではないか。 ところで、トランプトレードは日本銀行の金融政策にも大きく影響する。トランプ政権発足から時間をおかずに、トランプ氏は追加関税など保護主義的な政策を打ち出す可能性がある。前回のトランプ政権では、就任の翌年(2018年)からトランプ氏は保護主義的な政策に着手した。就任の年(2017年)は、減税を優先したのである。しかし今回は減税の優先度はそれほど高くないことから、就任の年から保護主義的な政策を進める可能性があるだろう。 日本銀行は、米国経済の情勢を重視しているが、トランプ氏の具体的な政策を見極めるまで追加利上げを見送る訳ではないだろう。追加利上げの時期に大きく影響するのはドル高円安だ。トランプトレードがなお続き、1ドル155円~160円の水準が定着し、政府が為替介入に動く情勢となれば、日本銀行は12月18・19日の次回金融政策決定会合で追加利上げに動く可能性が高まるのではないか。 他方、トランプトレードが早くに息切れし、円安の流れが一巡する場合には、不安定な国内政治情勢を考慮に入れて、日本銀行は年内の追加利上げを見送り、1月の会合での追加利上げを決める可能性が考えられる。現状では後者を標準シナリオとしたい。 先般の衆院選で躍進した国民民主党の玉木代表は、日本銀行の利上げを牽制しており、それも日本銀行の追加利上げを一定程度制約するのではないか。玉木代表は、来年の春闘の前に日本銀行は利上げをすべきではない、とも主張している。しかし、日本銀行は内外の経済、金融情勢に大きな変化がない限り、春闘後の来年3月の会合まで追加利上げを先送りすることはないだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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