トランプトレードはいつまで続くか?:危うさがあるドル高円安シナリオ:日銀追加緩和の時期にも影響
トランプトレードのドル高円安、株高のロジックに危うさ
実際、トランプ氏が掲げる追加関税がドル高要因であるかは不確実だ。追加関税導入による物価高が、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを遅らせる、あるいは再利上げを強いることなどから、ドル高をもたらすとの説明であるが、そのロジックは危ういのではないか。 前回の追加関税とは異なり、今回はすべての輸入品目を対象にする一律の追加関税引き上げを掲げており、その貿易、経済への打撃は甚大となる可能性がある。追加関税引き上げによる物価への影響は比較的一時的な現象である一方、それが明確に経済を悪化させれば、FRBの金融政策はいずれ大幅利下げを強いられるとの見方から、ドル安要因になると見る方が自然なのではないか。 さらにトランプ氏は、自身が大統領になれば、FRBに利下げをさせるとし、また、大統領はFRBの金融政策に関与すべきだと主張している。それを、法改正を通じて実現することを検討している、との報道もなされている。FRBへの政治介入は中央銀行及び通貨の信認を低下させてドル安要因となる。また、FRBの利下げが促されるのであれば、それもドル安要因だ。
追加関税導入は日本経済、企業に大きな打撃
トランプ氏が掲げる中国からの輸入品に一律60%の追加関税導入、その他の国からの輸入品に一律10%の追加関税導入、移民流入への強い規制が導入された場合、米国のGDPは2%程度低下する可能性が見込まれる。 また、トランプ氏が日本からの輸入品に一律10%~20%の追加関税を導入すれば、日本からの対米輸出には大きな打撃となる。追加関税の影響で米国経済が悪化する場合にはその影響も加わる。関税の影響を回避するため、日本企業が米国での生産を増やせば、その分、日本での生産や雇用は減少してしまう。このように、トランプ氏の保護主義的な政策が日本経済や日本企業に与える悪影響は深刻だ。こうした点を踏まえると、トランプトレードで日本株高、という状況は長くは続かないのではないか。