「資材高騰」「人手不足」で「あこがれの俺の城」はもう実現しないのか…!「令和の不動産バブル」が飲み込んだ「注文住宅」のさみしき終焉
建設価格がついに「5,000万円の大台」を突破!
いまや住宅販売は建売の分譲住宅が主流となり、自ら一から家を建てる「注文住宅」はすっかりと影をひそめてしまった。 【マンガ】「憧れのタワマン生活」が一転…!残酷すぎる「格差の現実」 前編『昭和のステータス「注文住宅」が絶滅危惧種となっていた…!「不動産インフレ」を噛みしめる住宅営業マンの「哀愁の回顧録」』でも紹介したが、私が前職のハウスメーカーに入社した1994年、当時の持家の着工数は年間に50万戸を超えていた。 その後、消費税の駆け込み需要で過去最高となる64万戸/年を記録したのが1996年である。しかし、それ以降市場は縮小を続け、現在では約3分の1の水準にまで落ち込んでしまったのだ。 近年、特に落ち込みの激しいのだが、その背景には住宅価格の上昇が考えられる。 大手住宅メーカーが公表している直近の住宅の単価を見れば、住友林業は4400万円、大和ハウスは4900万円である。さらに、昨今、ネットフリックスなどでなにかと話題となっている積水ハウスの平均単価にいたっては5184万円と初めて5000万円の大台をとっぱした。 断っておくが、これは建物だけの価格であり、土地は別途、用意する必要がある。つまり、注文住宅を建てるには、1億円以上の予算が必要になってくるわけだ。 バブルの崩壊を経験し、デフレ時代を生きてきた私たちにとっては目をむく価格である。 この背景にはインフレによってもたらされた構造的な問題がある。ひとつは人手不足、そしてもうひとつは、消費者の価値観の変化である。
「賃貸住宅」に流れる建設会社
人手不足は価格上昇以外にも大きな影響を与えている。 その一つが工期の長期化である。職人不足の影響で、かつてよりも建築に時間が掛かるようになっている。かつて「3K(きつい、汚い、危険)」と言われた建設現場も、働き方改革の進展により環境が変わりつつある。 現在では「4週8休」と言って、職人にも週2日を目安に休みを取らせる動きが広がっている。建設現場では工事工程上、連続勤務が求められる場合もあるため、完全週休二日制にはなっていないが、4週間の中で同じ数の休みを確保する形が取られている。 また、注文住宅市況が低迷する一方で、賃貸住宅の需要は旺盛である。 その背景には円安を基にした投資マネーの流入などがあるとされるが、これが注文住宅の工期にまで影響を及ぼしている。特に注文住宅と賃貸住宅を同じ施工部隊で手がける企業の場合、賃貸住宅の需要に対応するために施工能力がそちらへ割かれる状況が生じているのだ。結果として、注文住宅の工期がさらに伸びることになる。 工事が始まってから完成するまでの工期が長期化するだけでなく、着工そのものができない住宅メーカーも増えている。1年待ちや2年待ちといった声も珍しくはなくなった。注文住宅を建てるにはこれまで以上に多くの費用と時間が必要となったのである。 注文住宅は、もはや贅沢すぎる選択となってしまった。