「資材高騰」「人手不足」で「あこがれの俺の城」はもう実現しないのか…!「令和の不動産バブル」が飲み込んだ「注文住宅」のさみしき終焉
今でも「変わらないもの」
日本の住宅市場は注文住宅を中心に発展してきた歴史だが、「自分の想いを詰め込んだ夢のマイホーム」を実現したいという人々の価値観に支えられてきたものである。 昭和40年代には総合住宅展示場という新しいビジネスモデルが生まれ、そこで家族がマイホームの夢を膨らませる場が提供された。休日になるとキャラクターショーなどのイベントを開催し、多くのファミリーを集めた。一度や二度足を運んだ記憶がある読者もいるだろう。 しかし、現在では注文住宅は、社会構造に見合わなくなってきた。 欧米ではシステム化された住宅が主流であり、「自分だけの間取りを考える」という発想は少ない。社会的ステータスに合わせて住み替える文化が主流であり、汎用性の高い住宅が広く受け入れられている。日本もこのような考え方が主流となっていくだろう。 そもそも注文住宅は、自分以外の人にはなかなか受け入れられないという欠点がある。 独自に設計したこだわりの住宅は、自分にとっては理想的でも、次に住む家族にとっては不便なことが多いからだ。日本の家族ごとに最適化された注文住宅を主流としてきた背景が、日本の戸建住宅市場で中古住宅の流通が活性化しない一因ともされている。 これから注文住宅は減少の一途をたどるだろう。 ただし、我々不動産業界は、「注文住宅」によって培われた不動産取引の矜持を忘れてはいけないだろう。 私は、これまで何度も注文住宅の竣工の瞬間に立ち会ってきた。買い手側と売り手側、それぞれが互いの事情を深く理解して、完成していくのが「注文住宅」の醍醐味だった。 ビジネスがシステム化されるのはさみしいことだが、いまでも家を買ったり、売ったりする取引の背景には、「人と人との信頼」の上に成立することに変わりはないのだから。 さらに連載記事『日銀の利上げで「住宅ローン金利」も上がる!さて、いま「家は買うべきか、買わざるべきか」…難解な住宅事情をプロが徹底解説します!』でも、昨今の住宅事情について紹介しているので、ぜひ参考になさってください。
金田 健也(タカマツハウス 取締役専務執行役員)