世界の旅行テック企業のリーダーが語った直近トレンドと未来、航空は日本の地方都市が増加、生成AI活用の旅行サービスも本格化
生成AIの活用が進化、グーグルはより体験的に
今年のWiT Japanでは2日間にわたり、生成AIに関するトピックが多かった。グローバルOTAでは活用がかなり進んでおり、「AIアシスタントがユーザーに受け入れられている」(Trip.comイー氏)。同社のAIアシスタントの場合、例えば「タイに1週間の旅行に行きたいが、6~8月ならいつがいいか。フライトオプションはあるか?」といった音声のやり取りでレコメンドを出すことが可能だという。 プレゼンテーションで登場したグーグルは昨年、トラベル分野で「かなりの改善を図った」(Googleトラベルのプロダクトマネージャー鵜飼佑氏)。すでにローカルと旅行者の双方への対応を踏まえて、「ホテル」「レストラン」などの各領域を統合しているが、さらにビジュアルで体験できるUIに変更。今年はローカルでできるタイムリーなコンテンツを盛り込み、「Googleに行けば何か新しい発見がある、新しい体験ができることを目指していく」という。 その1つ、地図のルート検索では、ローカルのアクションを経験できるルートを提案。AIを使い、この場所で行くべきところ、体験できることを見せる。地図上も、例えば花の季節なら桜のアイコンも表示し、花見ができる場所を見るけられるようにしている。 日本でのローカル対応にも注力、地方の温泉街での体験も提供している。「よいビジュアルを見せて、温泉街の検索を誘導する。地方の町に行ったことがない人にも、体験できるようにしている」(鵜飼氏)。
日本OTAは注力分野の違いが鮮明
一方、日本の大手OTA4社(楽天、一休、JTB、リクルート)が登場したセッションでは、各社の方向性の違いが見て取れた。 「自社のデータのうち、日本市場の現況を表しているデータは?」という問いに対し、一休とリクルートは予約単価が2ケタ増となっていることを説明。JTBは日本国内の旅行がツアー中心で伸びている中、インバウンドのツアーは「日本の伸びより約200%上に振れた」(Web販売事業部長の 池口篤志氏)という。 今後の注力分野について、一休は「シェアを見れば、国内でまだまだ伸ばせる。特にヤフーのカジュアル領域」(宿泊事業本部長の巻幡 隆之介氏)との考え。JTBは「ツアー領域。インバウンド向けの着地型ツアー販売で、さらに伸ばせる」(池口氏)。リクルートは「タビナカ含む旅行全体。デジタル化しきれていない部分がある」(Vice President, Travel Information Division, SaaS Business Management, Sales Division 大野雅矢氏)と話した。 一方、楽天は「日本市場の現況を表しているデータ」として、今夏の海外旅行の予約が昨年比1.9倍であることを説明。「海外旅行はトータルでは厳しい状況だが、1、2年前に国内旅行で起きたオフラインからオンラインへの移行が海外旅行で起きている」(トラベル&モビリティ事業長の髙野芳行氏)とし、「そのマーケットを当社が取れている」とアピールした。今後の注力分野は「グローバル化」と回答。「国内でのシェアが高まり、国内で上げ続けるのは無理。競合のグローバルOTAは非常に強いが、そこと戦うことを選択して、シェアを伸ばしていきたい」とグローバル展開を明言した。 なお、国内OTAも生成AIの活用に着手。「コンテンツタイトルなどを提案させ、最適化したうえで提供」(楽天)、「検索のUXに活用」(一休)、「じゃらんAIチャットを提供」(リクルート)などだ。JTBも「内部プロセスで活用が進んでおり、マーケティングやプライシングでも研究を始めた。効率化を図ることで、顧客対応の時間を増やしていくことを考えている」(JTB)という。