「やっぱすげえなあ、あゆは」 “痛い”と叩かれても…今も浜崎あゆみに「40代が救われている」深い理由
タモリの言葉も興味深い。ジャズ以外はあまり聞かない、という彼が、あるトークで、浜崎あゆみの『M』の歌詞を引き合いに出したことがある。 「向上心がある人は、今日が明日のためにある人。向上心がない人は、今日が今日のためにある人。向上心イコール邪念ってことだよね(中略)夢があるようじゃ人間終わりだね」と、“明日のためだけの今日はつまらない“という持論を語り、 「浜崎あゆみの歌で感心したことあるんだよ。〈始まりはワケもなく始まり、終わりは必ず理由を持つ〉っていう歌詞があって。これ、よく言い表してると思って」(『ヨルタモリ』フジテレビ系、2015年5月10日放送)
大きな夢に挑む人を励まし、夢を嫌う人を唸らせる。浜崎あゆみの歌詞の、振り幅は大きい。 ■「あゆ」を終わらせようとしている気配 浜崎あゆみにうなるのは、歌詞だけではない。 ブレイク後の彼女は、テレビへの露出度、シングルのリリースの頻度、楽曲の密度、誰がどう見ても、歌手として長期スパンを視野に入れたパワー配分ではなかった。 非常に短いスパンでリリースされる新曲。シングルに4曲&リミックス4曲が入った、1枚のミニアルバム並みのお得感があった10th『A』は、よくこんな濃度が高くヘビーな楽曲を、短期間で作ったものだと驚かされる。
このままじゃ摩耗する。彼女自身が、制御不能になった「あゆ」を終わらせようとしている気配も、勝手な想像ながら、何度も楽曲から感じた。1999年には早くも『End roll』という、幕引きをテーマにした楽曲があり、途方に暮れたムードにドキリとした。 2000年の「絶望三部作」と言われる1曲『SEASONS』のMVは、喪服姿だ。ミレニアムに入り、ヒョウ柄タイツのジャケットでおおいに話題を呼んだ3rdアルバム『Duty』の表題作『Duty』は、1つの時代が終わり、〈次は自分の番だって事も知っている〉とエキセントリックに歌っている。