未来担う資産か、負の財産か…休館続く国民宿舎巡り揺れる地元 解体する方針の町に、住民からは早期改修・再開求める声も
休業中の鹿児島県肝付町南方の国民宿舎「コスモピア内之浦」を巡り、地元が揺れている。町は開会中の12月議会に同館の解体工事費5億9300万円を計上した補正予算案を提案し、20日の最終本会議で採決がある見通しだ。町は新たな施設の整備方針も示しているが、改修による早期再開を求める住民の間には議論不足を指摘する声があり、「地元説明会を開くべきだ」と不満もくすぶっている。 【写真】コスモピア内之浦の存続について意見を交わす地域住民=15日、肝付町南方のコスモピア内之浦
12月上旬、町内之浦総合支所であった町議会と住民の意見交換会。約80人の住民が訪れ、同館の今後について意見が集中した。参加者からの「改修すれば十分まだ使えるのではないか」「解体の結論ありきだ」との声に、賛意を示す多くの拍手が巻き起こった。 同館は1998年開業。和洋合わせて39の客室を備え100人以上が宿泊できるほか、日帰り入浴可能な温泉施設を備えていた。観光・帰省客やロケット打ち上げ施設関係者の利用でにぎわった時期もあった。 しかし、町が設置した施設の「あり方検討委員会」の答申書によると、2006年度以降は赤字が恒常化。近年20%台となっていた稼働率は新型コロナ禍が追い打ちとなってさらに減少が進んだ。結局、運営事業者は撤退し、20年9月からは休館が続いている。 近隣住民からは、温泉施設の必要性や、帰省シーズンの宿の確保などを理由に、早期改修・再開を求める声が上がっている。21年6月には3200筆を超える署名も町に提出された。
町は有識者団体からの提言などを踏まえ、「未来の世代に負の財産を残さない」として規模を縮小した新施設の整備方針を提示。新たな運営事業者の選定には、宿泊施設整備を条件に付けた。温泉施設は必須要件としなかったが、できない場合は町が主体となり設置する方針も示している。 施設の存続を求める住民有志は5月、「コスモピア内之浦を愛する会」を結成した。同館の草払いや掃除を定期的に行い、12月15日には42人が施設内を見学し、存続に向けた方策を議論した。 町による住民向けの説明会は23年3月にあったものの、解体方針を明確にして以降はない。「説明不足で解体決定は拙速だ」との見方について、永野和行町長は「議会の場で議論しているほか、振興会(自治会)の会長会などでも説明してきた。解体費用を計上した補正予算案が可決されれば、何らかの形で説明したい」と議会で答弁。同会の上村和美さん(65)は「決定後の説明は地元軽視では。耳に入ってくるのは不確かな情報ばかりで、納得できない」と疑問を呈する。
改修して施設を存続させることを希望する住民も多いとし、「休館が長引いているように、解体したら、さら地のまま塩漬けになるのではという不安もある。情報の錯綜(さくそう)を防ぐためにも説明を尽くして」と注文した。
南日本新聞 | 鹿児島