「プーチン訪朝」「ロ朝軍事同盟」に中国はどう反応したか…? 外交部報道官のあまりにそっけないコメントの真意とは
中国が意識し恐れていること
この新条約締結に関する中国国営新華社通信の報道も、漢字にしてわずか46文字だった。 〈 タス通信の報道によれば、ロシアのプーチン大統領と金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員長は、19日に平壌で、全面戦略パートナーシップ条約に調印した 〉 新華社通信は、自社の平壌支局があるにもかかわらず、わざわざ「タス通信の報道によれば」と、他人事のように報じた。もっとも同日(19日)深夜には、もう少し詳細に報じている。 〈 (前略)プーチン大統領は金正恩総書記との会談後に述べた。ロ朝が調印した「全面戦略パートナーシップ条約」は、両国の協力関係を新たなレベルに引き上げる画期的な文章だ。条約の中では、締約国の一方が侵略に遭った時は、もう一方が援助を提供すると規定されている。 プーチン大統領は述べた。安全問題と国際的な議題日程は今回の会談で重要なポジションを占めた。ロシアは「全面戦略パートナーシップ条約」を根拠に、北朝鮮と軍事技術協力を発展させていく可能性を排除しない。この条約の意義は大きく、将来のロ朝関係の基礎となるものだ。(以下略) 〉 一方、CCTV(中国中央広播電視総台)は、ロシア外務省のザハロワ報道官の言葉を引用して報道した。 〈 ロシア外務省のザハロワ報道官は発表した。ロシアのプーチン大統領の北朝鮮訪問は、西側諸国の激烈な反応に遭っている。ザハロワ報道官は言った。ロシアはアジア太平洋の一部分であり、ロシアはこの地域で自己の政策を制定する権利を有している。ザハロワ報道官は強調した。NATO(北太平洋条約機構)のメンバーと較べて、アジアの国はさらに責任感ある態度で、目下の国際関係を構築する措置を取ったのだ 〉 このように、ロシアは北朝鮮問題に関しても、NATOの存在を意識していることが分かる。ただ、ロシアが意識(敵視)しているのは、主にウクライナ戦争でウクライナを支援するNATOである。 これに対し中国も、別な意味でNATOを意識している。それは例えば、昨年、NATOがアジアで初めてとなる東京事務所を開設しようとした時に猛反発したことに表れている。「NATOがアジアにやって来る」ことを恐れているのだ。その意味では、明らかに中国は「ロシアと北朝鮮の側」に立っている。 「NATO対策」の延長として、中国が現在、熱を入れているのが、中朝国境のいわゆる「図們江開発」である。5月16日にプーチン大統領が訪中した際に発表した「中ロ共同声明」(正式名称は「中華人民共和国とロシア連邦の国交樹立75周年の際の新時代の全面戦略パートナーシップ関係を深化させることに関する共同声明」)の第3項に、次のような一文をさらりと入れた。 〈 双方は朝鮮民主主義人民共和国とともに、中国船が図們江を経由して海洋に航行できるようにする事柄について、建設的な対話を展開していく 〉 これはすなわち、中国の人民解放軍や海警局が切望している「日本海ルート」の開拓である。現状、中国の国境は、日本海の手前15kmほどまでしかなく、ロシアと北朝鮮の協力がないと日本海へ出られないのだ。