「プーチン訪朝」「ロ朝軍事同盟」に中国はどう反応したか…? 外交部報道官のあまりにそっけないコメントの真意とは
北朝鮮とロシアの「軍事同盟」の中身
6月19日にロシアと北朝鮮が締結した「包括的戦略的パートナーシップ関係に関する条約」の全文23条は、翌20日に北朝鮮側が公開した。もしかしたら非公開の付属文書もあるのかもしれないが、とにかく本文は公開した。その前文では、以下のように高らかに謳っている。 〈 朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦(以下「双方」)は、歴史的に形作られた朝ロ親善と協調の伝統を保全し、未来志向の新時代の国家関係を構築しようという共通の志向と念願から出発する。そして両国の国民の富興と福利を目指して、双方の間の包括的戦略的パートナーシップ関係を発展させることが、両国国民の根本的な利益に合致し、平和と地域及び世界の安全と安定の保障に寄与するだろうと確信する。国連憲章の目的と原則、その他の公認された国際法の原則と規範に忠実であるだろうと確信している。 覇権主義的な企図と、一極世界の秩序を強要しようとする策動から、国際的な正義を守っていく。国家間の誠実な協調、相互利益の尊重、国際問題の集合体的な解決、文化と文明の多様性、国際関係において国際法を優位に置く多極化された国際システムを樹立していく。共通の努力によって、人類の存在に脅威を与えるあらゆる挑戦に対処しようとする志向を確信している。 同志的で親善的な両国関係を公にして、すべての分野での協調を拡大強化させていく。朝ロ関係を地域と世界の平和と繁栄を主動する公の水準に引き上げることを志向しつつ、以下のように合意した 〉 北朝鮮もロシアも、国連や西側諸国から制裁を受けている身だが、「我らこそは正義なり」という開き直りぶりである。途中に書かれた「覇権主義的な企図と、一極世界の秩序を強要しようとする策動」は、主語が省略されているが、当然アメリカだろう。 そして、この条約の第3条と第4条には、次のように明記されていた。 〈 第3条 双方は、公表された地域と国際的な平和、安全を保障するため、相互に協力する。双方のいずれか一方に対する武力侵略行為が強行される直接的な脅威が醸成された場合、双方はいずれか一方の要求によって互いの立場を調節し、醸成された脅威を除去する協調を相互に提供するための可能な実践的措置を合理的な目的で、相互協商の通路を遅滞なく稼働させる。 第4条 双方のいずれか一方が個別的な国家もしくは国家群から武力侵攻を受け、戦争状態に入った場合、他方は国連憲章第51条と、朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦の法に準じて、遅滞なく自国が保有しているあらゆる手段で、軍事的及びその他の援助を提供する 〉 このように、北朝鮮とロシアの軍事同盟的な内容になっているのだ。実際、金正恩委員長は、首脳会談後の会見で「同盟関係」と述べていた。 第4条で、「ともに戦争する」とはなっていない。これは、北朝鮮が現在、ロシアに武器を提供しつつも、ウクライナと直接交戦はしていないように、将来的にアメリカが北朝鮮を空爆したりしても、ロシアがアメリカと直接は戦争しないことを担保しているのかもしれない。 だが中国にとってみれば、自国の西側にある大国(ロシア)と、東側にある「属国」のように考えている小国(北朝鮮)が、このような「物騒な条約」を結んでしまったのだ。いくら中ロ朝に「アメリカへの対抗」という共通目的があるとはいえ、手放しで喜ぶわけにはいかないだろう。 それは例えば、仮に中国とベラルーシが、このような条約を結べば、ロシアが喜ばないのと同様だ。だから上述のように、林剣報道官は「とぼけて」いるのである。