より安全な医療を目指すため学びを続ける―医療の質・安全学会学術集会 29日から横浜で
◇「医療安全」とはなにか
日本における医療安全の取り組みは、特に1999年の重大な医療事故を契機に大きく進展しました。いくつかの病院での事例が社会的関心を集め、医療安全対策が本格的に推進されるようになりました。また、病院には私のような「医療安全管理者」という役割が置かれるようになりました。 通常、医療は、医療者の努力により安全に行われています。しかし、人が人を診る以上、医療には不確実性が伴い、内在するリスク(危険)を完全に避けることも難しい状況です。その中でどのような問題があり、それにどう対処していくかを体系化し、同じ問題が繰り返されないようにしていくことが、私たちの仕事の1つです。 安全な医療を提供するのは当然です。しかし医療が進歩し、さまざまな新しい治療が生み出される中で、安全ばかりを過剰に注視するあまり、危険を躊躇することで新たな治療への挑戦などをやめてしまうことは、本来の医療の目指すことと相反していると思います。 治療を受ける際に患者さんが自分で治療法を選ぶための、「インフォームドコンセント(患者さんが治療の内容やリスク、メリットを十分に理解したうえで、治療に同意すること)」や「共同意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング=患者さんと医療者が一緒に治療法を決めるプロセス)」という考え方が広まっています。このとき、治療の危険性についてもきちんと患者さんに説明するために、過去の事例やデータを提供することも重要だと考えています。
◇医療安全領域の魅力と重要性
若手医療者や、医療職以外を含む幅広い分野の人たちに医療安全研究の魅力や重要性を知っていただきたいと考えています。 医療安全に関連した研究分野にはまだ多くの課題があり、未開拓の分野に挑戦できること、そしてさまざまな分野の現場の意見を聞き、共に考えることができることも魅力です。 医療の質・安全学会では、自分の専門分野に限らず、診療科や職種を超えて最新の知識や技術を得られます。特に特定機能病院などでは医療安全管理に関わる医師、看護師、薬剤師の配置が求められており、学術集会ではそうした異なる職種の人たちがネットワークを作る場も提供しています。
◇お子さんと安心して参加可能な学術集会
今回の学術集会では、無料託児所を準備しました。これにより、子どもを預けられずに学術集会への参加をあきらめていた女性スタッフも安心して参加していただけます。また、小学生以上のお子さんは各会場に入場できるほか、小学生を対象にした医療体験や医療安全を考える「キッズ医療アカデミー」も開催します。このような取り組みは近年当たり前になっているかもしれませんが、今学術集会の大きな魅力の1つだと思っています。ぜひご家族でご参加いただければと思います。
メディカルノート