ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
メカニズムは7割市販車と同じ……だが見ると別物
市販車両から70%のコンポーネントは引き継いでいるというが、実車を前にあれこれ解説を聞きながら、変更されている30%が肝心であることを思い出した。2年前にシグナテックのアトリエを取材した際、ちょうどFIAのR-GTホモロゲ―ションが取れたところで、フィリップ・シノー氏自ら嬉しそうにあれこれ説明してくれたのだ。 まず、前後のサブフレームは鍛造アルミニウムから削り出したもので、軽量高剛性であるのはもちろん、ノーマルよりもボディに高くマウントすることでショックアブソーバーのアッパーストラット位置ごと高くし、減衰ストローク量もAアームの上下動をも稼ぎ出している。 ちなみにリヤのサブフレームはGT4仕様と骨格は同じなのだが、ピロボール化されたAアームのマウント位置をRGTは低く、GT4は高くとることで、重心高を変えている。フロント側は、もともとアルミのL字型補強があちこちに入ったノーマルのサブフレームにストラットマウントを追加しているGT4に対し、RGTは鍛造アルミでストラットマウント一体のまま削り出している。 それだけラリーマシンが路面から受ける負荷が大きいということだ。極太のサブフレームの間には、基本的にはGT4と同じ仕様の、燃料の安全タンクが挟み込まれるように低く搭載されている。 そういえば、市販車は前後タイヤのトレッド幅が異なるが、A110RGTはパンク時などを考慮して前後とも235/40R18サイズで統一されている。 シグナテックで見かけたヘルパースプリングは、シャゼル仕様では縮め切って使われていた。ショックアブソーバーはフランスのALPレーシング製のARSというサブタンク式で、シャゼルもそのまま採用しているとのことだ。マネージャーのルイによれば、パーツ変更がほとんど許されないレギュレーションで、変更できるのはそれこそキャンバーやトー角などセッティングの範囲内に限られる。 だがA110RGTの強みは、ステアリングホイール上中央のボッシュ製モータースポーツ用ABSの12段階ダイヤルと、右下5段階のトラクションコントロールを、スペシャルステージの最中にでも状況に応じてドライバーが変えられることだという。左下のダイヤルはエンジン・マッピングで、ここだけはチームとの話し合いによって変える。ところでドライバーの右側に伸びているレバーはハンドブレーキで、シフトの変速はパドルシフターだ。 また、エンジンだが、ヘッドガスケットや電動ファンなどは強化されているものの、基本的にはノーマルのSの300馬力強。ターボチャージャーもノーマルのままだが、トランスミッションは3MO製のシーケンシャル6速で、発進時のみクラッチ操作を必要とする。 そうこうしているうちに、順番がまわって来た。同乗試乗とはいえ、競技ゾーンに踏み込む以上、チームの用意してくれた耐火スーツとハンス、ヘルメットを装着してコパイ・シートに滑り込む。フットレストには足で操作するボタンが3つ備わっていて、左からホーン、ワイパー、トリップメーターのゼロリセットとなる。それらはコパイの仕事という訳で、「足だって踏ん張る以外にもやれることがあるだろ?」と、その昔、解説してくれたシノー氏のドヤ顔が頭をよぎった。