カスハラ対策、企業に義務づけ 「顧客」「取引先」、幅広く加害者に
厚生労働省は顧客が理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守る対策を企業に義務づける。人手不足にも悩む飲食業や小売業では、指針づくりなどの対策が進んでいる。 【写真】「要求・苦情あっていい」カスハラ対策で大切なのは…自治体への助言 厚労省は16日に開かれた労働政策審議会の分科会に、カスハラ対策を企業に義務づける報告書案を示した。年内にも議論をとりまとめ、来年の通常国会で労働施策総合推進法の改正案を提出する方針だ。 報告書案によると、カスハラから従業員を守る措置として、対応方針の明確化とその周知、相談窓口の設置のほか、カスハラがあった場合の迅速な対応などを企業に求める。 ■「正当なクレーム」と線引き カスハラの定義については、「顧客、取引先、施設利用者、その他の利害関係者」が「社会通念上相当な範囲を超えた言動」を行い、「労働者の就業環境が害されること」とした。一方、消費者からの「正当なクレーム」はカスハラに該当しないことに留意する必要があるとも指摘した。 カスハラの対象者として、「顧客」には今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含まれる。また、分科会の議論では、消費者だけでなく、取引先の企業や、自治体の公務員らによる受注業者への言動なども含まれることが確認された。 企業間の取引で、カスハラの疑いがある自社の従業員について他社から調査協力を求められた場合は、これに応じた上で契約解除などの不利益な取り扱いをしてはならないことも法律や指針で定めるよう求めた。 報告書案には、就職活動中の学生らに対するセクハラ防止策や、従業員101人以上の企業を対象にした女性管理職比率の公表の義務づけも盛り込まれた。(宮川純一)
朝日新聞社