一夜漬けはもう終わり? 「定期テスト」に廃止の動き 新たな課題も
定期テストの廃止によって生じる課題も
とはいえ、単元テストも万能ではありません。単元テストは各クラスの授業進度に合わせて行うため、実施タイミングがクラス間でずれることが大きな懸念点の一つです。 先に単元テストを実施したクラスから、これからその単元テストを実施する別のクラスにテストの問題が流出すれば、成績評価が公平なものでなくなってしまいます。そのため、教師や保護者には、単元テストは自分の学習の到達度を確認し、その後の学習改善に生かすものであることを、生徒に理解させることが求められます。 また、自分の相対的な学力を知りたいと思っても、単元テストは定期テストなどとは異なり、一斉に比較可能な点数として把握しにくいデメリットもあります。さらに、単元テストは単元の数だけ実施することになるため、その実施回数は当然定期テストよりも多く、教師にとってはテストの実施回数が増える分、作問や採点、成績の集計といった業務負担が増える点も課題の一つです。 以上のように、定期テストを廃止して単元テストを導入することは、定期テストで生じる問題を解決する有効な方法の一つになりえますが、単元テストを必ず導入すべきということではありません。それぞれのテストの長所と短所を踏まえて、自校で育成をめざしている生徒像を実現するために最適な評価方法が何かを校内で議論することが重要です。 その結果、定期テストの問題の質や成績評価への生かし方(たとえば、評定に占める定期テストの成績のウエイト)を見直すことが最適であると判断するのであれば、「定期テストの存続」も十分考えうる選択肢の一つです。あるいは、実力テストや外部の模擬試験といった、定期テストや単元テスト以外の評価方法の活用も考えられます。
【定期テスト廃止の事例】 奈良県では、2022年度入学生から全県立高校で定期テストを廃止しています。奈良県立橿原(かしはら)高校は、定期テストに代えて、単元テストやパフォーマンス課題を評価の中心に据えました。 当初は定期テストをすべてやめることに不安を覚える教師もおり、学期末に複数の単元を範囲とする「総括テスト」も併せて実施。ただし、総括テストはあくまでも評価材料の一つとして扱い、評価全体の中での比重を抑えることでバランスを取りました。 同校では、定期テストの廃止を機に評価の在り方と方法を学校全体で考え直した結果、生徒に主体的に学ぶ姿勢が身に付きました。以前は定期テストの直前にプリントの内容を頭に詰め込むだけだった生徒が、授業に主体的に取り組み、授業後には疑問点を質問してくるようになったそうです。