一夜漬けはもう終わり? 「定期テスト」に廃止の動き 新たな課題も
中学校や高校で学期ごとに行われる定期テスト(定期考査)。最近は定期テストを廃止したり、実施回数を減らしたりする学校が増えています。 なぜ、そのような動きが見られるのでしょうか。定期テストがなくなると、成績評価はどのように行われるのでしょうか。保護者世代には当然の存在だった定期テスト。その意義や課題を改めて考えてみましょう。
定期テストの廃止が広まった背景と現状
2018年、東京都千代田区立麹町中学校が定期テストを廃止した(※当時)ことが全国的に注目を集め、同様の動きが全国に広がっていきました。 中学校を中心に見られた定期テストの廃止の動きはその後、高校でも私立で見られるようになり、現在は公立でも定期テストを廃止する学校が増えつつあります。ベネッセ教育総合研究所が行った最新の調査結果(※)によると、2023年時点で中学校の22.9%、高校の13.3%が定期テストを廃止、もしくは実施回数を減らすことを検討しています。 定期テストの廃止の動きを後押ししているのは、「成績評価の方法が定期テストに偏りすぎていないだろうか?」という教育現場の課題意識です。 現行の学習指導要領では、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点で児童生徒の学習状況を評価することが求められています。その3つの観点すべてを定期テストの結果だけで評価するのは限界があります。そのため、定期テストの結果以外にも、たとえばレポートの作成や発表、グループでの話し合い、作品の制作といった多様な活動の成果を材料に評価が行われるようになってきています。
定期テストに代わる評価方法は単元テストが大半、定期テストのデメリットをカバー
定期テストを廃止した学校の多くは、「単元テスト」を導入しています。 単元テストとは文字通り、1つの単元の学習が完了したあとに、その単元の定着度を確認するために行うテストのことです。各教科の単元(授業数時間分から成る、学習内容のまとまり)を評価の区切りとすることで、定期テストのような一発勝負ではなく、日々の学習の積み重ねが成績につながるわけです。 単元テストは定期テストに比べると出題範囲も広くないため、定期テスト期間によく見られる、複数の教科・科目を一夜漬けで勉強する生徒は、単元テストを導入するとあまり見られなくなります。 教師も生徒の学習内容の理解度や定着度をこまめに把握することができ、必要な指導が調整しやすくなるほか、ペーパーテスト以外の方法で単元テストを行うことで、より多様な視点で生徒を評価することができます。 また、生徒にとっては、単元や題材等のまとまりごとに自分の理解度を知ることができるため、理解度の低い箇所が増えてしまう前に学び直すことができ、学習内容の定着度を高める効果も期待できます。定期テストの廃止はそれ自体が目的ではなく、「評価をどのように学力向上につなげるのか?」という課題に取り組むための手段の一つであるといえます。