《追及レポート》何も知らない利用者が損をしている【火葬場のタブー】「キックバック」「割引利権」など”利権構造”うずまく不公平な因習の実態
割り引く費用は年間2億円以上
会員が事前に資金を積み立てる互助会型の冠婚葬祭業者とは一線を画し、「全東葬連」系の組合には、町の個人経営の葬儀社が多く加盟する。 この組合と火葬業者の間には、利用者が知らないところで不透明なカネの流れが存在するという。 「火葬業者は全東葬連に加盟する葬儀社に対してだけ、火葬料金の一部を現金で還付するキックバックを行っているのです。加盟していない葬儀社には、キックバックはしていません。 業界では“もどし”と呼ばれています。 20年以上前から、火葬料金の20%を『販売手数料』の名目で葬儀社に払い戻す、という決めごとになっていました。もちろん、そんな裏でのお金のやり取りを遺族が知るはずもありません。 実は3年前、都内の民間火葬業者『東京博善』の親会社が上場企業なので、不透明な金銭の動きはなくした方がいいとなり、一時的にキックバックが廃止されたことがあったそうです。しかし、組合側の反発を招いたので、火葬1件あたり1万円のキックバックが復活し、いまに至ります」(前出・都内の葬儀社経営者) 前述したように、葬祭業者は喪家から葬儀一式の代金を受け取り、その中から火葬場で担当者にお金を払う。その際、現金1万円を受け取るのだという。遺族が知り得ない「裏でのやり取り」だ。 さらに、組合加盟社しか行えない“格安葬儀”にも利権がある。 「区民葬」の名前で知られる、この格安葬儀。最低限の簡素な葬儀を安価で提供する、という名目なのだが、このシステムを使えば、火葬料金も減額される。本来なら9万円の火葬料金が、なんと5万9600円で済むのだ。 区民葬を希望する場合、死亡届を出す際に区役所で発行される「区民葬儀券」を受け取ることになっている。一見、公共の仕組みのように思えるが、そうではない。全東葬連系の葬儀社でしか、この葬儀券を扱えないため、区民葬は彼らの独占状態である。 区民葬の仕組みを担う「特別区区民葬儀運営協議会」の今年度幹事区である東京都北区の担当者が説明する。 「公金などは一切出ておらず、葬祭業者さんと火葬業者さんの善意で成り立っています。運営協議会は23区各区の部長級と、20名ほどの組合関係者で構成されています。 死亡数に占める区民葬の葬儀券発行率は昨年の北区で13%でした。2019年頃まで、23区全域でも交付枚数は3000件ほどでしたが、昨年は1万件を超えるなど、年々、数を増やしています」 もともとは、生活困窮者のセーフティーネットとして設けられたが、火葬料金が3万円も割引されるのだから、利用者が増えているのも当たり前だろう。 「“善意で成り立っている”というと聞こえはいいが、火葬料金の減額に関しては民間の火葬業者の”持ち出し”によって成り立っているんです。たとえば、都内の民間火葬業者『東京博善』だけで、区民葬で割り引く費用は年間で2億4000万円に上る計算です。 この区民葬の費用負担やキックバックがなくなれば、一般の火葬料金をもっと安く提供できる可能性もあるでしょう。古くからの慣習なのかもしれませんが、不明朗なカネの流れは、時代に合わないのではないか」(前出・都政関係者) そうしたキックバックや「割引利権」は全東葬連に加盟する葬儀社だけで、非加盟社にはない。ある非加盟の葬儀社の経営幹部はこう憤る。 「不平等そのものでしょう。なぜ彼らだけに、利権があるのか。そうした歪なルールは、“葬祭業界の闇”と言っていいですよ。 私の知人の業者が以前、全東葬連に加入しようとしたことがあるのですが、門前払いされたそうです。高額な入会金を求められたり、『組合の秩序を守り、悪徳業者が加入するのを防ぐための身体検査』などと称した不透明な審査があったりと、新規加入は実際にほとんどできない。既得権益を守るためにほかなりません。 葬祭業者の自由な競争を完全に妨げていますね」