四面楚歌の韓国大統領、弾劾回避の可能性-与党議員はジレンマに直面
(ブルームバーグ): 四面楚歌(そか)となっている韓国の尹錫悦大統領が率いる保守系与党「国民の力」の議員は、野党に大きな勝利を与えることなく支持率の低い大統領から距離を置くにはどうすればいいのか、というジレンマに直面している
今週、尹氏が宣布しその後短時間で解除に追い込まれた「非常戒厳」を巡る弾劾訴追案の採決が数日以内に行われる予定だが、与党議員は今のところ、可決を阻止した上で尹氏に離党を求めることでそのジレンマを解消しようとしている。
国民の力の韓東勲代表は5日、与党議員との会合で、尹氏による「違憲の戒厳令」を非難する一方、「保守系の政治家として支持者たちの心情」を考慮する必要があると指摘した。
「党の代表として、この弾劾案が可決されないよう努め、不意の混乱によって国民と支持者に被害が及ぶことを防ぐ」と述べた。
野党が主導する弾劾案の可決には、108議席を有する国民の力から最低8人の造反が必要となる。韓国紙・東亜日報は6日、与党議員のうち、少なくとも5人がまだ態度を決めかねていると報じた。
多くの保守派議員にとって、弾劾案の可決をきっかけに来年早々にも大統領選挙が実施され、そこで敗北を喫するリスクを冒すよりも将来的な選挙での勝利に向けて態勢を整える方が理にかなっている。尹氏の支持率は以前から低いが、弾劾案を今可決しても、最大野党「共に民主党」および同党の李在明代表の政治的機運を後押しするだけだ。
ソウルにある明知大学校の政治学教授、Shin Yul氏は「議員にとって、全要素の中で最重要視すべき唯一のことは、いかにして自分たちの政治生命を延ばすかだ」と指摘。「与党議員はメリットとデメリットを検討しており、今回は弾劾案に反対票を投じた方が得策だと考えるだろう」と述べた。
李氏はブルームバーグとのインタビューで5日、尹氏の弾劾案を巡り、今週の可決は困難な可能性があるとの認識を示した。その上で、最初の投票で弾劾が可決されなかったとしても、引き続き共に民主党は尹氏の罷免を求め続けると述べた。