『103万円の壁』、9割の企業が見直しを希望 引き上げや撤廃に賛成の声多数【帝国データバンク調べ】
一定の年収を超えると手取りの収入が減ってしまう、いわゆる「年収の壁」を意識し、労働時間を調整する人は少なくない。議席数を飛躍的に伸ばした国民民主党は、所得税の支払いが発生する「年収103万の壁」を178万円に引き上げる案を掲げており、現在自民、公明両党との政策協議を進めている。 【画像でわかる】夫婦の『へそくり額』平均302万円、女性が男性を上回る結果に。男性の半数は妻の収入や支出を把握せず 年収の壁が引き上がれば、アルバイトやパートタイマーなどの働き方が変わり、人手不足の解消が期待できると言われているが、企業側はどう捉えているのだろうか。帝国データバンクが調査した「103万円の壁の引き上げについて」の企業アンケートをみてみよう。
約9割の企業が「103万円の壁」の“引き上げ”、もしくは“撤廃”を希望
アンケートは2024年11月8日~12日、有効回答を得られた企業1,691社を対象にインターネット調査で実施された。日本の社会全体にとって「103万円の壁」の引き上げについてどう考えるか尋ねたところ、引き上げに「賛成」と回答した企業は67.8%、「反対」はわずか3.9%だった。他方、103万円の壁自体を「撤廃すべき」と回答した企業が21.9%。「賛成」と「撤廃すべき」を合わせると、約9割の企業が103万円の壁を見直す必要があると認識している。
「103万円の壁」撤廃に期待が高まる一方、それだけでは不十分という声も
「見直し」を求めている企業が最も多いが、各企業で考え方に違いがあるようだ。 では早速、企業側のコメントをみていこう。 「103万円の壁」引き上げに賛成の企業は、「103万円の壁を意識するパートの方が多く、引き上げれば働き控えが解消される」(飲食店)、「最低賃金の引き上げが加速するなか、制度の見直しは避けられない」(運輸・倉庫)、「減税効果により消費活動が活発化する」(不動産)と、働き控えの解消に一定の効果を果たすと考えるほか、減税効果によって手取り収入が増えることに期待する企業が多かった。 一方で、引き上げには賛成ながらも、「社会保険料の106万円・130万円の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」(情報サービス)と、現行案に期待できないという声も。一定要件の下で年収が106万円以上になると、厚生年金・健康保険に、130万円以上で国民年金・国民健康保険に加入する義務が生じ、保険料の支払いが発生する。そのため、103万の壁だけではなく、社会保険料も含めた制度の見直しを求める企業がみられた。 また、扶養や控除の仕組みが税金の計算を複雑にしているという考えから、「扶養をなくしシンプルにみんな働いた分だけ累進課税で納税して、家族がいる場合は状況に応じて給付する方が分かりやすい。」(製造)と、複雑な現行制度を撤廃し、新しい仕組みを導入すべきだという意見も。 一方、反対意見として、「壁の引き上げによって財源不足となり、増税となるのではないか」(建設)と、別の形でしわ寄せがくることを危惧する声もあった。 出典元:【株式会社帝国データバンク】
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