これをしないと家族と最後のお別れすらできない…子供と離れて暮らす高齢者が今すぐやるべき「終活」とは
■情報をまとめておかないとお別れもできない 2024年6月10日放送のNHK「クローズアップ現代」で、ひとり暮らしの女性が急病で搬送されて亡くなり、海外にいた娘さんの電話番号が不明だったために、死亡した病院のある市が身寄りがないと判断し、火葬したことが取り上げられました。 娘さんと女性は頻繁にLINEで連絡していて、女性からの返信がないことを心配し、娘さんは知人や警察に依頼して家を見てもらったり、救急搬送の履歴を調べるなど、懸命に安否を確認しました。 しかし、女性が亡くなったことを知った頃には、すでに火葬が済んでおり、娘さんは最後にお母さんの顔を見てお別れをすることもできませんでした。 とても悲しい行き違いですが、スマートフォンですべてやりとりすることの多い現代では、実は、市役所や病院などの第三者が、ある人の大事な人や親族に連絡を取ることはとても難しくなっているのです。 だからこそ、自分が伝えられない状態になったとしても、大事な人の電話番号などの必要な情報が第三者にわかるようにしておく必要があるのです。 ■「終活」は「防災」と同じ 救急車で運ばれる場合、救急隊員の方はできるだけ財布と鍵を一緒に持っていくといわれます。また、運び込まれた人の意識がない場合などは、病院のスタッフが持ち物を確認することになります。 通常、財布のなかは必ずチェックしてもらえるので、倒れた場合の緊急連絡先やエンディングノートをしまっている場所などの情報は、紙にメモして財布に入れておくのがおすすめです。 なお、いざ倒れたときに救急隊員の方に持ち出してもらうべきものを袋にまとめ、玄関などに置いておくのも一つの方法です。倒れる場所が自宅とは限りませんが、外出先で倒れたとしても、誰かに取りにきてもらえるかもしれません。 緊急連絡先を記入したエンディングノートや、入院となった場合に手元にないと困るものを入れておくようにすれば、物事がスムーズに進む可能性が高くなります。 このような準備は、防災と同じです。 災害はいつ来るかわかりませんから、防災準備は早めにやっておくにこしたことはありません。いつまでに準備を終えるか、期限を決めて取り組むことが肝要です。 親が「老後ひとり難民」になることが心配な方は、「私も一緒にやるから」といって誘い、一緒に取り組んでもいいかもしれません。 ---------- 沢村 香苗(さわむら・かなえ) 日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト 精神保健福祉士、博士(保健学)。 東京大学文学部行動文化学科心理学専攻卒業。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。国立精神・神経センター武蔵病院リサーチレジデントや 医療経済研究機構研究部研究員を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。2017年よりおひとりさまの高齢者や身元保証サービスについて調査を行っている。 ----------
日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト 沢村 香苗