株式は「長期保有」にメリットが生まれる傾向にある? 政策保有株式の売却、自社株買い企業増加の影響とは
2024年は自社株買いを行う企業が増加し、11月上旬においてすでに6兆円を超える買い越しとなっています。過去最高記録だった2023年の約4兆9000億円を上回る金額です。 【画像】死ぬまで持ちたい銘柄とその買い方
政策保有株式の売却&自社株買いが増加
2024年は、自社株買いの実施と政策保有株を大幅に減少させると発表する企業が相次ぎました。 大成建設は2026年度末に政策保有株式の純資産比を20%未満に縮減すると発表しました。政策保有株式の売却代金で、取得上限3000万株(自己株式を除く発行済み株数の16.41%)、または1500億円の自社株買いを行うとしています。 東レは2024~2026年度に政策保有株式を50%(約1000 億円)削減し、売却代金全額を自社株買い取得に充てると発表しています。取得総数は1億5500万株(自己株式を除く発行済み株式総数の9.67%)、取得総額1000億円とのこと。 みずほフィナンシャルグループも、16年ぶりに自社株買いをすると発表しています。他にも、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループや損保大手なども自社株買いを公表しています。
政策保有株式の売却が進む背景
政策保有株の解消や自社株買いなどの動きは、東京証券取引所が2023年3月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を背景に増加しています。 政策保有株は企業双方で持ち合っている場合もあれば片方の企業だけが持っている場合もあります。「政策保有株=物言わぬ株主」として安心安全である一方、資本効率の低下を招き、通常の株主側からすれば中長期的に不利益を被ることにもなりかねません。 企業同士の癒着温床といった見方もあり、2024年、損害保険業界では金融庁が売却を要請する事態になりました。
長期保有を狙った「累進配当」実施企業が増加
政策保有株式の削減によって、これまで以上に企業は利益を出す事はもちろん、株主に対してイメージダウンを及ぼすようなことは控え、株を「保有し続けたい」と思ってもらえるように努力を重ねる考えが強くなっていきそうです。 このような流れを背景に累進配当を実施する企業が増えています。累進配当とは企業が株主に支払う配当金を毎年増配、または最低でも横ばいの水準で配当し続けることです。これにより、株主にとっては「保有し続けたい」銘柄になるでしょう。 トップは累進配当期間42期の武田製薬(4205)、続いて32期の三菱HCキャピタル(8593)、28期の住友精化(4008)となっています。その他、商社や地銀なども累進配当の実施を増加させています。 また、累進配当以外にも、株主優待を拡充する企業も目立ちます。東証は2022年4月4日から「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4市場を再編し、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場を発足させました。その際、上場維持基準を満たしていない企業でも新市場にとどまることができる「経過措置」を設けましたが、この措置が2025年3月以降、順次終了するとしています。 そうした影響もあり、株主に人気のQUOカードを株主優待に選ぶ企業が多くあります。2024年11月から12月上旬にかけて株主優待を新設した企業29社中、13社(4割以上)がQUOカードを贈呈するとしています。 株主への還元は歓迎すべきことですが、気をつけたほうがいいこともあります。財務などに問題がない場合は良いのですが、無理をして株主優待を行っている場合は、株主優待の廃止や株価の暴落など、思わぬ状況に巻き込まれる可能性もあります。 株主の方々は一見有利な優待内容に惑わされ、安易に株を購入しないよう充分気をつけていただきたいと思います。
たけぞう(個人投資家)