障害者ら自立へ 就労移行支援「ジョブリード大津」、駅前で古書店運営
JR大津駅前の古書店「町の古本屋さん」(大津市春日町)をご存じだろうか。就労移行支援事業所「ジョブリード大津」が運営し、障害を持つ人(利用者)が自立するための経験と技術の獲得を目指して働いている。キャッチフレーズは〝大津駅近くで一番元気な古本屋〟。古書店を開く事業所は珍しく、同事業所は「古書販売はいろいろな業務を経験できる。自分に合った働き方を見つけてほしい」と期待する。就労移行支援の利用期間は原則2年。利用者は早期の自立を目指している。 【画像】秋の本格営業のチラシ ■多岐にわたる業務 一言で古書店といっても、業務は多岐にわたる。 販売する古書は寄付に頼っているが、寄付を募るチラシ作りから、住宅や事業所へのポスト投函(とうかん)、連絡があれば台車を抱えて引き取りに出向く。集まった古書はアルコールで拭くなどしてきれいにし、在庫管理のために台帳に登録する。 販売は、インターネット販売を手掛けるアマゾンへの出品と、店頭の2ルート。メインはアマゾンで、注文が入ると丁寧に梱包(こんぽう)し、メッセージを添えて発送する。 店舗は普段、平日午前10時~午後3時の間、客が来れば販売しているが、年に数回、定期的に本格的な古書店を開店する。当日は全員がエプロン姿で、「いらっしゃいませ」と声を出し、接客にあたる。 ジョブリード大津所長の牧薫さん(57)は「売り上げは大切だが、あくまでツール(手段、道具)。古書店にはいろいろな業務があり、得手、不得手を知ることができる。人とかかわることが苦手な利用者も多いので、業務を通して経験を重ねている」と話す。 ■19歳~50代の20人 ジョブリード大津が古書店を始めたのは令和5年5月。現在は就労移行支援として精神障害、発達障害、引きこもり経験者など障害を抱える19歳~50代前半の男女20人が働いている。 昨年10月から働く家田楓香(ふうか)さん(23)は、気分の落ち込みや自信が持てない、聴覚過敏などで鬱病と広汎性発達障害と診断されている。同9月まではアクセサリーパーツをネットで販売する会社で働いていたが、「キャパ(キャパシティー=容量)を超えて、しんどくなった」(家田さん)ため退職。今は半日勤務で週4日、販売部で古書をアマゾンに出品する業務にあたっている。「症状や自分の弱みが少しずつわかってきたので、作業にも慣れてきた。気を使いすぎて、気持ちや言葉をため込みがちだが、職員と相談、面談して吐き出す練習もしている」。目指すは「こんなことしてもいいんだ」「まぁいいか」と思えることだという。 発達障害の一つ、ASD(自閉スペクトラム症)と診断されている中嶋佑心(ゆうしん)さん(21)はコミュニケーションがうまくできず、就活につまずき、今年9月から仕入れ部で働く。「古書のメンテナンスなどは得意なこと、自己判断が求められるのは苦手なこと。少しずつわかってきた」といい、「業務を通して得意なことを見つけ、増やしていきたい」と意欲をみせる。