「なぜ“100年に1人の天才”がわざわざ無名校に?」全国高校駅伝26年前の奇跡…「1日60km走ったことも」駅伝弱小県の新興校が“超名門”になるまで
初の都大路へ…両角監督の「執念」
そして結果的に、この策はハマった。 1区の松崎が区間賞で滑り出すと、2区以降も重圧を撥ね除け、7人全員が区間賞。他を寄せ付けない圧勝劇だった。4区を走った小嶋は、このレースに懸けた両角監督の執念を記憶している。 「実は県駅伝直前の10月に行われた“都大路の前哨戦”と言われる日本海駅伝で、自分がオーバーペースで大ブレーキを起こしたことがあったんです」 しかも小嶋は、そのレースからの帰りのバスの中で、サンダル履きで不貞腐れていたのだという。それを見咎めた両角監督に、サービスエリアで激怒された経験があった。 「それもあって、両角先生も自分に対してちょっと不安があったんだと思います。この日の序盤は両角先生が“100mごと”にペース設定してくれて。『絶対に飛ばして入るなよ』と」 過剰とも言える細かなペース設定。だが、その甲斐もあって小嶋は難コースで区間新記録をマークしている。ほんのわずかな不安の芽も許さない徹底ぶりだった。 ようやく目標にしてきた全国行きの切符を手にした。だが、恩師を胴上げしながら松崎の胸に去来したのは喜びよりも安堵の気持ちだったという。 「この時はとにかく全国に行くことが目標で、『全国の舞台で戦おう』とか『入賞を狙おう』とか、そんな気持ちは全くなくて。とにかく入学以来の目標が達成できて、『やっと終わったぁ』という感じでした」 「5年で全国高校駅伝出場」という目標を達成した“寄せ集め集団”の1期生と両角監督。この時ばかりは、どこかホッとした気持ちで会場を後にした。 ところがその後には、彼らが予期しなかったエピローグが待っていることになる。 <次回へつづく>
(「Number Ex」山崎ダイ = 文)
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