新潟県で高品質な冷凍枝豆を製造 県産品を通年で提供可能に
新潟県農業総合研究所食品研究センターはこのほど、食感や外観に優れる冷凍枝豆の製造技術を開発し、今秋以降の商品化に向けて県内企業などへの技術支援を進めている。国内に流通する枝豆のうち約6割を冷凍枝豆が占めており、そのうち国産の冷凍品は4%にも満たない。その中で、作付面積日本一の「枝豆王国」として高品質の県産枝豆を冷凍で通年販売・提供可能にすることで、市場での影響力を高めていきたい考えだ。 冷凍枝豆は基本的にブランチング後に冷凍する。自然解凍ですぐに食べることができ、飲食店などで重宝されるほか、SMの惣菜売場でも定番商品となっている。 通年で手に入るのが魅力で、年末年始や花見など行楽シーズンにも需要が大きい。半面、冷凍枝豆は生産者にとっては生鮮品と比べて実入りが少なく、台湾などからの輸入品に頼っているのが現状だ。 20~23年の3年にわたる同センターの研究は、冷凍によって生鮮品に比べて食感が劣化、鮮やかな色味がくすんでしまう冷凍枝豆の欠点に対して、生鮮品と同等の硬度やより鮮やかな外観を保持できる製造法・解凍法を確立したもの。具体的には、サヤの厚みと食塩濃度に応じた適正な時間でブランチング処理し、240秒以内に急速冷却冷凍装置に投入する。また-35度Cで貯蔵することにより、1年は品質を保持できる。解凍後も硬度やサヤの色味を保持できるが、特に飲食店のスチームコンベクションオーブンなどによる過熱水蒸気の利用を推奨している。 この技術を県産の冷凍枝豆製造業者に導入し、県産枝豆の通年供給による販路拡大や販売額の向上を狙う。同センター園芸特産食品科の佐藤嘉一科長は「年間を通しての提供はずっと考えていた。それに、夏場にとれすぎた枝豆をどうするのか、という問題の解決にもなる」と話す。 一方、この技術に対する製造業者の期待も大きい。製品化に手を挙げた十日町市の柳農産は、枝豆の生育に適した地域性を生かしたブランド枝豆「つまりちゃまめ」で全国的に高い評価を得ている。これまで生豆のみ出荷してきたが、安価な冷凍枝豆でもブランド品として高い価値が付加できれば、事業の幅も大きく広がると見ている。「冷凍することで捨てるものが減ることはもちろん、冬場の雇用にもつながる」と同社の柳大輔氏。 現在は「新潟系14号」という品種で進めている。大ぶりで海外産に見劣りしないためだ。ターゲットとなる関東圏では、大ぶりな群馬県産の天狗印枝豆などに人気が集まる傾向もある。技術的に品種は問わないが、新潟県産枝豆の味をアピールするための選択で、今後はそれ以外の県産品種にも対応していく考えだ。同センターは、県内の複数社に対して指導しており、今秋の生鮮枝豆のシーズン終了後に狙いを定めている。今シーズンについては3t程度の出荷を見込んでいる。 国産冷凍枝豆は、枝豆のブランド化で一歩先に進む山形県や、ラインを整備し高コスト・高品質の液体窒素を使った瞬間冷却品に力を入れる北海道なども虎視眈々(たんたん)と市場を狙う。作付面積日本一の「枝豆王国」新潟県としても、ここで存在感を示し産地としてアピールしていきたい考えだ。
日本食糧新聞社