大学の女性教員を3割に、どうしたらいい? 子連れで図書館利用、託児所は…
ロールモデルとの交流で不安を解消
早稲田大学の23年度の女性教員は381人、女性比率は20.6%でした。16年度の254人、14.9%から増加傾向にあります。 教員・研究者を目指す女性にとって大きな壁となるのが、ライフイベントとキャリアとの両立です。大学院を修了して教員・研究者となり、キャリアを積んでいくタイミングと結婚や出産というライフイベントが重なる傾向があります。ダイバーシティ推進室では、その壁を少しでも低くしようとさまざまな取り組みを実施しています。 その一つが「女性研究者メンター制度」です。修士課程や博士後期課程の学生やキャリア初期の研究者が抱える悩みや問題に対して、学内の先輩研究者が一対一の面談でアドバイスする制度です。実体験に基づいたアドバイスによって、キャリアを具体的にイメージして、問題解決につながるようなヒントを得ることが期待できます。 「面談の内容は口外しないルールなので、どのような相談がなされているのかは詳しく把握できていませんが、やはり出産や育児との両立という面で悩んだり、すでに困難を抱えていたりする人が多いようです」(太田さん) また、「Rikohティータイムシンポジウム」では、理工系の分野で活躍する企業に勤めている女性、教授や准教授などの研究者たちや、ロールモデルとなるような女性を講師として、講演や交流会を開催しています。それぞれのライフステージで感じた経験などを語ってもらって将来の姿を見せることで、両立していく道を示しています。
各キャンパスに託児室を
もちろん環境面の整備も欠かせません。早稲田大学では育児支援制度として、各キャンパスに託児室や授乳室を設置し、ベビーシッター派遣事業の割引券交付や、ホームヘルパーを利用した場合の補助金の支給などを行っています。 また、研究に欠かせない場である図書館は、子連れでの入館が可能です。 「全教職員に対して定期的に『ダイバーシティ推進に関する意識・実態アンケート』を実施しており、調査の意味合いだけではなく、制度や設備について検討する参考にしています。また、託児室・授乳室には利用者が自由に意見を書けるノートを用意し、一人ひとりの声をなるべく拾えるように尽力しています」(同) 女性教員を増やすための直接的な取り組みについては、学術院(学部、大学院、研究所を1つに統合した組織)ごとに実施しています。 「全学術院の学術院長が集まる会議の場では、採用における女性の応募者数、採用者数などを公表し、互いに把握できるようにしています。こうした間接的、直接的な取り組みによって、着実に目標達成に向かって進んでいます」(同) 「黄金の3割」といいますが、構成人数の3割以上を少数派が占めるようになると、意思決定に影響力を持つようになり、マイノリティーではなくなると考えられています。早稲田大学がいつ「黄金の3割」を達成できるのか、要注目です。 (文=中寺暁子)
朝日新聞Think キャンパス