電子マネー文化の先駆け「Suica」に立ちはだかる“時代遅れ”という壁
近年ではさまざまな店舗で導入が進んでいるが、日本で初めてセルフレジが導入されたのは2003年、大手コンビニチェーンではローソンの2010年が最初だという。これに対してJR東日本がNewDaysに導入したのは2007年とかなり早い。 朝の通勤時間帯はどうしても混雑し、会計待ちの列が店舗の外まで延びることも珍しくない。待たされる人はイライラし、行列を見て入店を諦める人も多かった。 そこで釣り銭が発生しないSuicaを活用したセルフレジを導入し、会計時間の大幅な短縮を図ったのだ。 実際には利用率が伸びず、早々に撤去した店舗もあったようだが、これも駅利用者のほぼすべてがSuicaを持っているから成り立つチャレンジだった。 ● QRコード決済の台頭により 電子マネーの決済額が頭打ちに 一方で課題もある。電子マネーでは圧倒的な存在感を誇っていたSuicaだが、2019年頃からPayPayなどのQRコード決済が急速に普及し、決済額は2022年に逆転した。その後も伸び続けるQRコードに対し、電子マネーの決済額はここ数年頭打ちでもある。 Suicaはあくまでも鉄道利用が主で、電子マネーは附帯サービスの位置付けであり、システムの都合上、チャージ残高の上限が2万円と少ない。
一方、PayPayは個人間送金やグループ支払いなど柔軟なサービスを提供しており、Suicaはキャッシュレス決済手段としての魅力に劣る。 駅構内の売店、コンビニなど1分1秒を争う店舗であれば、QRコードを表示して読みこませるより、タッチするだけで完結するICカードが有利だが、QRコード決済は個人店にも広く普及しており、JR東日本経済圏をマチナカに広げていくうえではネックとなる。とくにICカード普及率の低い地方では太刀打ちできない。 ● クレジットカードのタッチ決済に Suicaは太刀打ちできるのか また近年では、クレジットカードを直接タッチして支払う「オープンループ」と呼ばれる決済手段が交通業界にも広がりつつある。関西の主要な鉄道事業者は関西万博を見据えて2025年春までに導入を完了する予定である。関東の大手私鉄でも実証実験が行なわれている。 Suicaは事前にチャージして使うプリペイド型だが、クレジットカードのタッチ決済は後払いのポストペイ型だ。Suicaで鉄道を利用した場合、一旦は通常の運賃を支払い、後でまとめて乗車ポイント、リピートポイントなどが還元される仕組みだ。