電子マネー文化の先駆け「Suica」に立ちはだかる“時代遅れ”という壁
日本初の本格的電子マネーであり、2003年にANAと提携してマイル経済圏に組みこまれたことで大きな注目を集めた。 ただ、Edyは電子マネーである利点や明確な利用スタイルを示すことができず、赤字体質を脱することができないまま、2009年に楽天グループの傘下に入った。 これに対してSuicaは首都圏の鉄道利用者なら誰でも持っているうえ、常に一定額がチャージされている。電車に乗る前のわずかな時間でも小銭を出さずに買い物できるという便利体験は、まさに百聞は一見に如かず、だ。 2005年6月の電子マネー対応店舗は約1000店舗だったが、翌2006年6月には約6700店舗と、急速に加盟店開拓が進んだ。2007年にはタクシー大手の国際自動車、日本交通がSuicaに加盟。 2008年にはJR西日本のICカードICOCAと電子マネー相互利用を開始し、首都圏だけでなく関西圏でも電子マネーが利用できるようになった。
サービス開始から10年後の2014年7月末には約26万店、2022年度末に約163万店にまで達しており、2023年度の電子マネー利用件数は月平均で約3億件だ。JR東日本は2027年度に約6億件まで引き上げる数値目標を掲げている。 加盟店と利用額が増えるにつれて、手数料収入も存在感を増してくる。2023年度のIT・Suica事業の営業収益は約616億円、営業利益は約162億円。クレジットカード事業も含む数字だが、乗車券として開発されたSuicaがここまでの波及効果を生み出したのは先見の明があったというしかない。 2006年にモバイルSuicaが誕生し、駅に行かなくてもチャージが可能になったことで、電子マネーとしての利用の幅が広がった。 ビューカードでチャージすれば1.5%のポイントがつくことも手伝って、モバイルSuica利用者はカード型Suicaの利用者と比べて、電子マネーの利用回数が多い傾向にあるという。 ● 大手コンビニより3年早く セルフレジを導入 もうひとつ先駆的といえるのは、キャッシュレス化によるセルフレジの導入だ。