「ゴミのように扱われた」異例の敗走、ロシア兵が抱く不信感 データが示すプーチン氏の思惑とは #ウクライナ侵攻1年
ウクライナ側が傍受したとするロシア軍の音声では、ロシア兵とみられる男性が妻に最期の別れを告げていた。 「(男)俺たちは包囲されているんだ。もうじきおしまいだ(女)持ちこたえているって言ってたのに。あなたたちには死ねっていう命令が出ているのね?(男)俺はただ、さよならを言おうと思って電話したんだ(女)いやよ、いやよ、そんな!」(10月1日ウクライナ国防省公開の音声より) 音声が公開された10月1日、ロシア国防省は「包囲される危険性があることから、軍隊はより有利な場所に撤退した」と公式に発表、リマンはウクライナ軍によって奪還された。ウクライナ側が公開した映像には、リマン市街地の路上に放置された兵士たちの無残な姿が映し出されていた。 この直前、ドネツク州を含む4州ではロシアへの一方的な併合を進めるための「住民投票」が行われ、9月30日にはプーチン大統領が4州の併合を宣言した。 東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師は、リマンの部隊が撤退を許されなかった背景にプーチン大統領の思惑があったとみている。
「ウクライナ4州併合に関する声明を出すまで、ロシア軍がリマンから撤退というニュースを流したくなかったのかなと。完全にプーチン大統領のメンツのために死守を命じられたのではないかと思います」
使える戦車を残したまま敗走 無計画な作戦の果てに
さらに動画や写真を調べると、ロシア軍が撤退したあとに多くの兵器がほぼ無傷で放棄されていたこともわかった。
これは何を意味するのか。ロシア軍の兵器の損失を調査してきた国際調査チーム「オリックス」によると、2022年8月からの3カ月間にロシア軍が東部戦線で失った戦車と歩兵戦闘車は合計813両に上った。このうち、ウクライナ軍がそのまま使用できる状態で回収されたのは、半数以上の445両だった。 通常、戦車などは敵に利用させないよう退却する前に破壊するが、その余力さえないまま撤退したとオリックスのヤクブ・ヤノフスキ氏は分析している。