知られざるヨーロッパのアートシティ、ドイツ・デュッセルドルフを巡る。
驚くのは、金曜日と土曜日の夜に実際にクラブとして、60~70年代の音楽をかけて営業すること。このクラブが夜な夜な賑わいを見せていた頃がデュッセルドルフのアートや音楽界の全盛期であり、その復活は何か新しいムーブメントが起こりつつあるのを感じさせる。(クラブとしての営業は金・土の19時~25時。入場料無料、ドリンク代別)
異なる役割でアートを支える層の厚さ。
〈クンストパラスト美術館〉がここまで新しい試みができるのは、デュッセルドルフにはいくつもの美術館やアート・インスティテューション、ギャラリーなどがあり、それぞれが重なる事なく独自の分野をカバーし、全体として非常に幅広く層の厚いアートの世界を構築しているからに他ならない。 「高額な有名作家の作品を購入するのは資金の豊富な個人コレクターなりに任せればいいし、美術史に則った有名作家のエキシビションは市内の別の美術館で見られますから」(クレマー)
その主だった美術館とは、デュッセルドルフ市を有するノルトライン=ヴェストファーレン州の州立アートコレクションによる〈ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館〉の本館〈K20〉と分館〈K21〉だ。前者は近代まで、後者は現代美術を主にカバーしている。 更にデュッセルドルフには個人のコレクターが発展させたアートインスティテューションが複数あり、作品購入で若手アーティストを積極的にサポートする〈フィラーラ・コレクション〉、ビデオアートやデジタルアートの先駆的なコレクションで知られる〈ユリア・ストシェック財団〉などが定期的にエキシビションを開いている。
また今年オープンして早くも注目を集める個性的なギャラリーもあり、これらが相互作用し補完しあって、デュッセルドルフのアート界を形作っている。若手が作品を発表できるギャラリーがあり、それを購入してくれる個人コレクターがいる。そしてやがては美術館で展示する好機に恵まれる作家もいる。
この循環の出発点となっているのが〈デュッセルドルフ芸術アカデミー〉だ。2024年に創立250周年を迎えた同校の存在なしに、デュッセルドルフのアートは語れない。