知られざるヨーロッパのアートシティ、ドイツ・デュッセルドルフを巡る。
才能を生み出し続けるヨーロッパ有数の芸術大学。
1773年の創立以来、18~19世紀にはすでにヨーロッパのアート界でデュッセルドルフを重要な位置に押し上げた〈デュッセルドルフ芸術アカデミー〉は、現在に至るまで世界的なアーティストを輩出し続けている。冒頭に言及したボイス、リヒター、キーファーの他にも、ジグマー・ポルケ、ハインツ・マック、カタリーナ・フリッチュ、トーマス・シュッテ、アンドレアス・グルスキー、トーマス・ルフ……と枚挙にいとまがない。 彼らのうち少なくない者は後に同校の教授となり、また80年代以降、ナム・ジュン・パイク、ダニエル・ビュレン、トニー・クラッグら世界のトップアーティストを教授に迎えている。ボイスを始めとするアカデミーゆかりのアーティストが、世界的な注目をデュッセルドルフに集めたのは当然の流れだ。 一方、ハインツ・マックがオットー・ピーネ、ギュンター・ユッカーと共に、デュッセルドルフに展開した前衛芸術運動のグループ〈グループ・ゼロ〉は、日本を含む世界数十カ国と連携する巨大な国際アートネットワークとなり、多くの影響力のあるアーティストがデュッセルドルフに移り住むきっかけとなった。 「当時(デュッセルドルフには)ヨーロッパ有数のギャラリーもあったので、結果(デュッセルドルフの位置する)ノルトライン=ヴェストファーレン州の収集家とアート機関は西ヨーロッパで最も強力になり、デュッセルドルフはニューヨークに次ぐアートセンターとなったのです」(デュッセルドルフ芸術アカデミー教授ロベルト・フレック) 東西ドイツが統合してからの衰退は前述した通りだが、2000年代後半から復調の兆しが見え始め、2009年に学長に任命されたトニー・クラッグがより自由な裁量を教授や学生にもたらしたことで、その傾向は一層高まったと言われる。現在、アカデミーには35カ国の学生が学び、かつての栄光の上に新たな歴史を刻もうとしている。 再び歩み始めた芸術の街、デュッセルドルフを訪れ、数世紀にわたって収集された貴重なコレクションの数々と、今まさに起こりつつある新たなアートに出会ってみたい。
コレクション展『The New Kunstpalast』
〈クンストパラスト美術館〉Ehrenhof 4-5, 40479 Düsseldorf, Germany。2023年11月21日~。10時~18時(木~21時)。月曜休。定期的に展示内容を少しづつ変えて行く予定。入場料16ユーロ。
text_Ayako Kamozawa