何が本当で何が嘘? フェイクカルチャーが横行するSNSの現状とは。
自己愛的欠陥
スピード感と現在主義に取りつかれて、見かけだけで判断することに終始しがちな今日の資本主義社会は、私たちをどこへ導くのだろうか? 「待ち受けるのは極度の孤独、そして自滅だ。高度に規格化された現代社会は、なんらかの規範へ適応するよう私たちに強制してくるが、それは逆説的に、社会的なつながりをもたらさない」と精神分析学者のローラン・ゴリは警鐘を鳴らす。有名な詐欺師たちの心理状態は反面教師だ。精神分析学者のパトリック・アヴランによれば、「詐欺師には自己愛的欠陥がある。彼らは自尊心が低いが故に、なりたい自分になるための物語をでっちあげる。詐欺によって自己満足するのだ。そして詐欺の才能を発揮して別な自分を作りあげるには、本当の自分を消さなくてはならない」そうだ。精神分析学者のローラン・ゴリも同意見だ。「精神分析医の目からこうした人たちは、何も症状がなく、完全に正常に見えるのに、どこかがおかしい患者に映る」と言う。ニセモノとホンモノを区別し、空虚な存在の上に自分の人格を構築するのを避けるために、自分を偽ることをやめよう。まずはSNSから自分らしくない完璧な家族や理想的なヴァカンスの写真を削除してはどうだろう。たとえあなたの800人のフォロワーがこれまでなにも気づかなかったとしても!
憧れのアンチヒーロー
嘘つきには魅力がある。そして、たとえ彼らのでっちあげが(ほとんど)常に現実に打ち砕かれることになったとしても、熟練の詐欺師たちが手の内を全て明かすことはめったにない。だからこそ、彼らは映画製作者や作家、ポッドキャストの作者たちを魅了するのだ。 【映画】 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』、2002年、スティーブン・スピルバーグ監督。レオナルド・ディカプリオ扮する主人公、フランク・W・アバグネイル・Jrは航空会社のパイロット、医者、あるいは弁護士のふりをして偽造小切手を発行する天才詐欺師。実在の人物に基づいた作品だ。 『シック・オブ・マイセルフ』、2022年、クリストファー・ボルグリ監督。迷える若い女性シグネが、注目を集めるために自分が珍しい病気にかかっていると信じ込ませるブラックコメディ。 『L'Emploi du temps(英題Time Outタイム・アウト)』ローラン・カンテ監督、オーレリアン・ルコイン主演の作品。これと『見えない嘘』、2002年、ニコール・ガルシア監督作品は、同じエマニュエル・カリエールの小説『L'Adversaire』(P.O.L.刊)を映画化したもので、偽医師として暮らしてきたジャン=クロード・ロマンが正体を暴かれる寸前に妻、子供、両親を殺害する物語だ。 『ニュースの天才』、2003年、ビリー・レイ監督、ヘイデン・クリステンセン主演。記事の半分を自作自演した実在のジャーナリスト、スティーブン・グラスの半生に基づく作品。 『ビッグ・アイズ』、2014年、ティム・バートン監督、エイミー・アダムス主演。1960年代に世間を欺いた売れっ子画家ウォルター・キーンによる壮大な作品詐欺の実話に基づいた作品。 【ポッドキャスト】 『La Mythomane du Bataclan(バタクランの嘘つき女』』(Les Jours)。アレクサンドル・カウフマンによる人気ポッドキャスト。ワーナー・ブラザース。ディスカバリーにより、ロール・カラミー主演でドラマ化される予定。 『Serial Mytho(詐欺師シリーズ)』(Louie MediaのPassages)。マチュー・パランによる4話構成のドラマ。 『Mytho(s)(詐欺師たち)』(Binge Audio)トマ・ロゼックが稀代の詐欺師たちを語る。人々にとほうもない夢を売り、時に身の破滅を招いた詐欺師たちの運命を語った4話構成のシリーズ。
text : Justine Foscari (madame.lefigaro.fr)