外遊びが減ると低下するのは運動能力だけではない--イノベーション人材の育成に必要な「遊び」
日本はどちらかというと、抜きんでた子どもは伸びづらいけれど、取りこぼされてしまう子どもはすくい上げるような、中央値に押し込める力が強い気がします。 窪田:学力で平均をとりやすいと。 為末:これはスポーツも同じで、以前、陸上の1万メートルの世界記録を調べてみたら、1番から200番までに日本人は1人もいなかったのですが、200番から500番までに最も多く入っていたのは日本人でした。 窪田:そう考えると、万人向けの教育はそろそろ変えたほうがいいかもしれません。いつまでも詰め込み型教育では、新しい発想を生み出すようなイノベーション人材は育ちにくいと思います。
■10代でピークを迎える、スポーツの「早期教育」 為末:興味深いのが、スポーツ界はむしろ詰め込み型のほうに傾いてきているんですよ。 窪田:え? それは最近ですか? 為末:はい。詰め込み型というか、「こうすればトップ選手になれる」というパターンがあるといわれていて、それをいかに早い段階から実践していくかが重視されています。だから、ある競技でトップクラスの選手が、ほかのスポーツをした経験がほとんどなかったりするんです。
窪田:それは意外でした。 為末:本来であれば、外遊びのように自分たちでルールを決める創造性の高いものと、ドリブル練習のように決められたトレーニングと、どちらもバランスよく取り入れたほうが総合的な運動能力は上がります。しかし、月曜から金曜までずっと同じトレーニングをこなしていくような育成方法が一般的です。 ■スポーツに「遊び的」な要素が必要 窪田:そうなんですね。私が幼少期を過ごしたアメリカでは、シーズンスポーツが一般的で、秋はサッカー、冬はアイスホッケーのように季節ごとに違うスポーツを体験します。競技を絞って専門性を高めていくのは、高校生くらいから。その結果、あれだけのアスリート大国になっている。