外遊びが減ると低下するのは運動能力だけではない--イノベーション人材の育成に必要な「遊び」
この流れは、先進国でより明確です。スポーツが民営化されると子どもたちはお金をかけてスポーツを習うようになりますが、そうすると肥満などの健康状態や運動能力が、経済格差とリンクしていく。日本でもそうした変化が始まりつつあります。誰でも無償でできる外遊びは、その差を埋められる重要な要素なのです。 窪田:格差の広がりを抑えるためにも、外遊びを推奨していく必要がありますね。 為末:そう思います。一昔前までは、お金持ちの子どもは “もやしっ子”などと言われていましたが、最近ではそういう子たちほどスポーツを習って、体を動かしている。今は放っておけば子どもが外で遊ぶ時代ではないので、いかに外に連れ出すかが課題だと思います。
窪田:たしかに外で遊ぶよりは、家でゲームをしている子どもが増えています。中国では、18歳未満の子どもたちにゲーム時間の規制をかけるなど、かなり思い切った政策を展開していますが、為末さんは子どものゲーム禁止についてはどう思いますか? ■日本ではなぜイノベーション人材が育ちにくいのか 為末:日本ではそうした極端な政策は馴染まない気がしますね。外遊びを推進するには、ゲーム禁止よりは「公園をもっと楽しい場所にする」といった方向でアプローチしていったほうが、日本人には合っていると思います。
窪田:中国の場合はゲームの制限だけでなく、学習塾に規制をかけて、詰め込み型教育をやめようと大きく舵を切っています。子どもの考える力を強化していこうとする教育改革です。同じような動きはイギリスや香港でもあります。 しかも、香港では学習塾に規制をかけても、学力は下がらなかったんです。外遊びもそうですが、多様な経験をしているほうがむしろ有利な問題が出題されているといいます。 為末:それは面白い結果ですね。基本となる学力は、一定のパターンを覚える詰め込み型教育が効くと思うのですが、その上の段階ではクリエイティブな発想を伸ばしていく教育のほうがいいですよね。