深川麻衣 初出演にして主演をつとめた映画で最優秀新進女優賞を受賞!映画、ドラマに引っ張りだこに
■主演映画がきっかけで家族写真を撮影
2019年、「日本ボロ宿紀行」(テレビ東京系)で地上波連続ドラマに初主演。このドラマは、父親が急死したために芸能事務所を引き継ぐことになった娘・春子(深川麻衣)が、たったひとり事務所に残った48歳の一発屋ポップス歌手・桜庭龍二(高橋和也)と二人で地方営業の旅に出ることに…という展開。 ――大量に売れ残ったCDを売り切るために凹凸コンビが繰り広げる珍道中が面白かったです 「ありがとうございます。『日本ボロ宿紀行』はすごく私の中で大事な作品です。ここで出会った高橋和也さん、チームの皆さんは今でも変わらず大切な存在です。 撮影日数がタイトで、1話を2日間で撮っていたのですが、大変な分みんなのペースや呼吸もどんどん合っていきました。オールロケで転々と実在する宿を巡るお話なのですが、本当にみんなで旅をしているような感覚でした。 チーム全員でいいものを作りたいという熱量で向き合えた作品だったので、もしも仕事でつらいことがあった時は、自分の中の原点に戻るためにこの作品のことを思い出そうと思っています。事務所を移籍して初めての主演ドラマでもあり、いろいろな思いが詰まっている作品ですね」 ――登場するのは、すごい宿ばかりでしたね 「はい。本当に個性豊かな宿ばかりでした。でも、やっぱり時代の流れとともに道路の区画整理とか再開発などで閉業したところもあって。撮影していたときに『もうすぐなくなっちゃうんです』と宿の方から話を聞くと切なかったですけど、このドラマを通して長年愛されてきた宿を映像で残せたことがうれしかったですね」 ――宿そのものはなくなっても、映像作品として残っているというのは大きいですね 「そうですね。そう思っていただけていたらうれしいです」 2021年には、映画「おもいで写眞」(熊澤尚人監督)に主演。この作品は、東京で夢に破れ挫折した主人公・結子(深川麻衣)が、故郷・富山で亡き祖母が遺した写真館で遺影写真の仕事を始めることになり、新たな夢を見出していく様を描いたもの。 「結子は演じる中ですごく苦戦しました。監督からも『一切笑わないで』という演出もありましたし、ずっとなにかに苛立ったり、怒りを抱えている役でした。もちろんそこにはちゃんと理由があるんですが、笑えないというのは、人間の生理的にこんなに大変なんだと思いました。 おじいちゃんとかおばあちゃんを撮っていく中で、レンズ越しに目が合って微笑みかけてくださるとうれしくて、反射的に笑顔になっちゃうんですよね。 そのコミュニケーションの中で無意識に出てしまう部分も抑えないといけなかったので。口角が1、2ミリでも上がったら監督から『今、ちょっと笑っちゃったからもう1回』と指摘があって撮り直すということが何回かありました。 撮影は、約2週間ぐらいだったんですが、人間として笑うとか、喜ぶ・楽しいなどの感情を一切排除して、自分の中で怒りを作り続けなければいけないのはこんなに大変なことなんだと痛感しました」 ――この作品はいい発想ですよね。昔の人はあまり個別のお写真がない方も多く、集合写真ぐらいしかなくて、お葬式に行ったときに劇中と同じようにピンボケの遺影を見た記憶があります 「そうですよね。あの作品は監督が長い間温めてきた作品で。お葬式のときに遺影で使える写真がないというのは、現実問題としてすごく多かった中で、この映画を見てそういうお仕事を始めてくださった方もいて。そのご報告のお手紙をいただいたときはすごくうれしかったですね」 ――あの映画を見て、自分のおじいちゃん、おばあちゃんの写真をちゃんと撮ってもらおうと思った方もいらっしゃると思うので心にも優しい映画だなと思いました 「ありがとうございます。うちの母もあの映画がきっかけで、『私も写真を撮ってほしいな』と言って、私が仲のいいカメラマンさんに家族写真を撮ってもらったんです。 それがなければ改めて家族写真を撮ることはこの先なかったかもしれないので、すごくいいきっかけになりました」