不安な老後の「お金」、3つの“わからない”を把握する
老後には3つの不安(お金・健康・孤独)が存在します。中でも多くの人が最も大きな不安を抱いているのは「お金」に関する不安でしょう。老後不安をあおる記事のほとんどはお金に関するものがほとんどです。たしかにそういうたぐいの記事を読んでいると悲惨な老後の話というのはいかにもありそうで、つい引き込まれてしまいますし、事実こういう記事はよく読まれているようです。
漠然とした「不安」の正体は何?
老後のお金に関しては誰もが漠然とした不安を持っています。では、その不安の正体は一体何なのでしょう?それは“わからない”ことにあります。何がわからないのか?老後のお金については3つの“わからないこと”があります。 まず1つめは支出、つまり「老後の生活にいくらかかるのかわからない」ということです。次に収入、これは「老後にどれぐらいのお金がもらえるのかわからない」ということ、そして最後は「そのために一体どれぐらいお金を用意すればいいかわからない」ということです。 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがありますが、人は正体のわからないもの、よく見えないものに対しては本質的に恐怖感を持つものです。だとすれば、この3つがわかるようになれば、いまよりも少しは安心できるはずです。 仮に支出と収入を考えて「これでは足りない」ということがわかったとしたら、“足りない金額”がはっきりするわけですから、その金額を目標として蓄えていけばいいことになります。仮にその目標がとても達成できそうもない金額であれば、支出を減らすことを考えればいい、というごくシンプルな話です。つまり足らないのが不安なのではなくて、“わからない”のが不安なのです。 だとすればまずやるべきことは、この3つの“わからない”をわかるようにすることです。
老後の生活費はいくらかかる?
支出に関していえば、最初にやるべきことは現在の生活における支出が一体どれぐらいあるのかを把握することです。 ところがこれをやっている人は意外と少ないのです。基本は家計簿をつけることですが、現在家計簿をつけている家庭は2割もないと言われています。特に昔と違って支出の多くが現金ではなく、カードや電子マネーが使われているため、把握しづらいという面があります。ただ、最近は便利な家計管理アプリもあり、スマホでも簡単にできるようになりつつありますから、まずは現時点での生活費を把握しておくことが大切と言えるでしょう。 私自身、すでに定年退職した人間ですから、その経験から言えば、「住宅ローンの返済」、「子どもの教育費や生活費」がなければ、退職した後の老後の日常生活費はおおよそ現役時代に比べて7~8割程度というのが実感です。 これは日常生活費ですが、これに加えて趣味や楽しみのために使うお金、いわゆる自己実現費がありますし、家のリフォームや車の買い替え、子どもの結婚資金援助といった一時出費もあります。いずれこのあたりについても詳しくお話していきますが、これらの費用は人ぞれぞれです。お金のかかる趣味かか、からない趣味か? 子どもがいるのかいないのか? など、その人のライフプランや人生観によって全く異なるので、一概には言えません。自分と家族でよく考えてどんな支出が考えられるかを把握しておくことが大切です。