小型ロケット「イプシロンS」爆発に人手不足の影 15万人足りない宇宙人材
「このような事態になったこと、地元や関係機関の方々のご尽力にもかかわらずご期待に応えることができず、たいへん申し訳ない」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の井元隆行プロジェクトマネージャは26日午後に行われたオンラインでの記者説明会で、次世代小型ロケット「イプシロンS」のエンジン燃焼試験で爆発が起こったことを陳謝した。 【関連画像】種子島宇宙センター竹崎展望台屋上から撮影した爆発直後の様子(写真=JAXA提供) 前提として、現在、日本で運用されている小型ロケットはない。2013年から運用されていた固体燃料の小型ロケット「イプシロン」は22年、6号機の打ち上げに失敗。このイプシロンを改良した次世代小型ロケットとして開発が進められているのがイプシロンSだ。大型の新型基幹ロケット「H3」と同じ部品を使うことでコスト低減を図り、H3と共に国内外で需要の高まる衛星打ち上げビジネスでの競争に勝ち抜くことが期待されている。 ただ、そのイプシロンS は、23年7月に初の2段目エンジンの燃焼試験を能代ロケット実験場(秋田県能代市)で実施したが、爆発して失敗。この爆発で実験場の試験棟が全焼して使用できなくなったため、今回は種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)の施設で試験が行われた。 前回試験の失敗は、高温になって溶けた点火装置の一部がモーター内の隙間に入り込んだことが原因だと断定して、今回はこの部品を断熱材で覆う対策を施していた。 ●「正しく原因が究明されていなかった」 2回目となる2段目エンジンの燃焼試験は26日午前8時半に始まった。JAXAによると、燃焼開始20秒後から予想していた燃焼圧力を上回りはじめ、49秒時点で爆発したという。予想していた数値を上回り爆発した現象は、前回の爆発時と同じだという。また、記録されていた燃焼圧力は、モーターケースの耐圧圧力を下回っていたが、爆発した。これも前回と同じ現象だという。 国内でこの試験を行うことができるのは能代と種子島のみ。能代の復旧にも数年かかるとされ、今回の爆発で種子島の復旧にも数カ月かかる見込みだ。イプシロンS初号機は24年度中の打ち上げを予定していたが、井元プロジェクトマネージャは「厳しいと思う」とし、遅れが避けられない状況だ。 三菱重工業でH2Aロケットの開発に携わった金沢工業大学の森合秀樹教授は「同じ事象が起きたということは、正しく原因が究明されていなかったということ。対策が全く功を奏しておらず、技術的に糾弾されるべき話だ」と厳しい。