「さあ、16回目のCL優勝へ!」絶対的な勝者と信じ抜くからこそ…“レアル・マドリー”は皆の心に宿り続ける
勝利とイコールの存在
ここはレアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウ。日付は6月2日、時刻はまもなく24時になろうというところだ。 【動画】レアル・マドリー、優勝を決めた圧巻の2ゴール! ピッチ上につくられた舞台では、デシモキンタ(15回目の欧州制覇)を成し遂げたばかりの選手たち、カルロ・アンチェロッティ率いるコーチングスタッフがビッグイヤーを中心にして輪をつくって、回りながら歌を歌っている。チームの面々を回らせ、歌わせるのは7万人以上集まった白の信奉者たちだ。 彼らはデシマ(10回目の欧州制覇)達成の際につくられたイムノのほか、お馴染みのチャントも天に響かせていた。 「アシ! アシ! アシ・ガナ・エル・マドリー(マドリーはこう勝つ)!」 「コモ・ノ・テ・ボイ・ア・ケレール?(どうして愛さずにいられようか) シ・フイステ・カンペオン・ウナ・イ・オトラ・ベス(何度となく欧州王者になったのならば)」 ……つくづく、凄まじいチャントだと思う。世界の最たる常勝クラブは、そのサポーターから勝つことを大前提とされている。彼らを愛する理由のハードルは、あまりに高い。リヴァプールの「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン(人生一人ではない)」、アトレティコ・デ・マドリーの「エナモラード・デル・アトレティ、ノ・ロ・プエデス・エンテンデール(アトレティへの愛、お前には分かるまい)」、ベティス の「マンケ・ピエルダ(たとえ負けようとも)」など、無条件の愛を誓うものとは真逆のベクトルである。 マドリーのサポーターは、彼らを応援するチームが絶対的な勝者なのだと信じて止まない。そうでないとみなせば、容赦なく監督や選手たちをこき下ろしてきた歴史がある。傍から見れば、狂気じみているように思えるだろう。 しかし、僕は確信している。マドリーはだからこそ、どんな状況でもゴールを決め、最後には勝利をつかみ、どこよりもタイトルを獲得しているのだ。「おかしいのはほかのクラブだろ? 正しいのは私たちだけだ」という絶対的な思い込みがあるからこそ、他の追随を許すことがないのだ。だからこそマドリーは、惜敗で流す涙も感動のドラマになるフットボール界で、唯一勝利とイコールで結ばれる存在なのだ。