「さあ、16回目のCL優勝へ!」絶対的な勝者と信じ抜くからこそ…“レアル・マドリー”は皆の心に宿り続ける
“レアル・マドリー”そのもの
今回のチャンピオンズリーグ(CL)決勝ボルシア・ドルトムント戦の前、僕は盟友のスペインフットボールカルチャーマガジン『パネンカ』の記者兼コーディネーターであるルジェー・シュリアクに一つのコラムを依頼した。そのテーマは「バルセロナファンから見たマドリーの嫌いなところ」。現在のマドリーに抱える嫌悪感を書き連ねてもらい、逆に彼らの強さを浮き彫りにすることを意図していた。 ルジェーにとっては書くのをためらうテーマかもしれず、申し訳ない気持ちもあった。しかし、その出来は想像を優に超えるものだった。そこには僕の今後の人生に永遠に刻み込まれるであろう、こんな言葉も記してあったのだ。 「レアル・マドリーでプレーするために生まれた選手などいない。“レアル・マドリー”はホセルの頭の中、ナチョの心の中、もしくは、フェデ・バルベルデのつま先に宿っているものなのだ」 「彼らは勝者のメンタリティを、マドリディスモ(レアル・マドリー主義)の根幹たる不撓不屈の精神を、まるで伝染性の真菌のように培養して、成長させていったのである」 これは10年で6回のCL優勝を達成したマドリーの核心を突いた言葉だと思う。彼らの現在の黄金期が始まったのは、デシマを達成した2013-14シーズンのCL決勝アトレティコ戦。当時もアンチェロッティに率いられていたチームは、0-1で迎えた92分48秒にモドリッチのCKからセルヒオ・ラモスがヘディング弾を決めて延長戦にこぎ着け、逆転優勝を果たした。 CL優勝から12年間も遠ざかっていたために、それまで辛辣な批判も受けてきたマドリーは、デシマから新たな勝者のメンタリティーを体得している。劇的勝利からの優勝という経験は、“自分たちのクオリティーならば最後まであきらめないことで絶対にゴールを決められる。最後には絶対に勝っている”、という自信を生み出した。それはクリスティアーノ・ロナウド、S・ラモス、ベンゼマらが残していき、カルバハル、ナチョ、モドリッチ(デシマ後に加わったクロースも)らが伝え続けているメンタリティーであり……ルジェーの言う“レアル・マドリー”そのものである。