三越伊勢丹の名物バイヤー、神谷氏がサステナビリティ推進部マネージャーに就任 新境地を語る
WWD:早かったですね。
神谷:当時は「サステナビリティはメーンストリームでないからそこに新しい価値、先進性があるのではないか」と思い、取り組んでいました。リ・スタイル プラスらしいカウンターカルチャーという意識です。
WWD:“やらねば”ではなく、“新しいことをしよう”から入っているところがいいですね。
神谷:ファストファッションが急成長する中、大量生産に対するアンチテーゼであり、「価格より価値が大事だ」という感覚が強かったですね。ファッションに機能性だけでなく情緒性や社会性を加味し、新しい価値観として提供したかった。
WWD:2020年にリ・スタイルをリモデルしたときには「パワー・オブ・チョイス、私たちができること」といった切り口でした。
神谷:この時はサステナビリティという言葉を使いました。ただしサステナビリティを絶対的なものではなく、多様性のひとつ “美しい選択”としてとらえたメッセージです。
小売り・ファッションとサステナビリティを結びビジネスとして成立させる難しさ
WWD:そういった変化に敏感なのは、バイヤーとしてさまざまなクリエイションや社会を見続けてきたからこそでしょう。
神谷:そうですね。年に4回ほど海外出張をするなかでブランドから「これは再生ポリエステルで作った」「これは残反だから少量しかない」といった話を多く聞くようになったり、プライズに選ばれるデザイナーもマリーン・セル(Marine Serre)をはじめ、サステナビリティに通じる考えがある人が増えたりするのを見聞きするなかで「そういう文脈になっているのだな」と受け取りました。ただ、それをお客さまに押し付けるのも違う。1人1人を否定せずに自分なりのスタイルを発信したかった。
WWD:特に、2022年3月に実施した「デニム de ミライ」は大きな話題になりました。
神谷:自分の中でもそういうマインドが醸成していたときに、たまたまヤマサワプレスを訪れて廃棄寸前の「リーバイス(LEVI’S)」のジーンズ“501”の山を見て「なるほど、やろう」と思えた。“デニムdeミライ”での活動は、本業であるファッションコンテンツとしての魅力を高めようとしたことや、様々な人を巻き込んで規模を大きくして発信性を高めたこと、つまり本業として当たり前のことに精一杯の力を入れて活動したことで、良い結果につながりました。