三越伊勢丹の名物バイヤー、神谷氏がサステナビリティ推進部マネージャーに就任 新境地を語る
WWD:サプライチェーンマネジメント業務を具体的に。
神谷:主にお取り組み先との対話です。最近は特にラグジュアリーブランドは自社の行動規範を持ち、こちらに提示されることも多い。昨年から、新宿店の商品チームを中心に現場のバイヤーが約500社のお取り組み先と対面で品質管理や法令順守、人権への配慮など双方の規範の話をしています。
WWD:1社ずつ話すのは労力ですね。行動規範を配って終わり、ではない、と。
神谷:対話を通じてお取り組み先がサプライチェーンの川上をどこまでさかのぼり、何を大切にしているかを把握できることは意味がある。小売りの立場だと川上の現実はなかなか見えないから、対話を通じてかなり勉強になっています。サステナビリティ推進部はグローバルの動きやリスクなどの情報共有をします。昨年までは学ぶ立場だったのですが今年は伝える側ですね。一方通行ではなく、現場が活かせる情報として伝えていきたい。
WWD:サステナビリティに携わると従来のファッションビジネスにはない言葉や価値観と出会うことが多いのでは?
神谷:勉強しなければ、はすごく実感しています。知らない用語、取り巻く法律もそうだし社内の行動規範や調達方針もそう。すでに明文化されたものはあるしバイヤーですからある程度は知っていたけれど、自分の言葉で言語化して人に伝えることはまた別です。
WWD:この職務で自身のどんな姿を目指していますか。
神谷:現場感覚と経験、あと社内外のつながりを生かして、具体的な取り組みを推進したい。
サステナビリティはカウンターカルチャーという意識だった
WWD:「営業」と聞くと何かを売るイメージですが、ここで言う「営業」は営業施策の横展開、という意味ですね。つなぎ、巻き込んでいく、それは神谷さんがバイヤーとして「デニム de ミライ」などで実践してきたことです。
神谷:そうですね、思い返せば、バイヤー着任2年目の2016年に工場の余剰生地をデザイナーとピックアップして多品種少量生産の提案をしたり、リ・スタイル プラス担当のときは、希少性×エシカルという設定で、「ファセッタズム(FACETASM)」や「コシェ(KOCHE)」などと環境配慮素材や余り物から1点ものを作ったりしていました。