「せっかちで目立ちたがり」な企業は何県に多いか? 帝国データバンク調査
「社長の若さ」が一番だった都道府県はどこ?
── 中小企業の後継者不足が問題になっていますが、都道府県で差があるようですね。 北村 後継者の有無を示す指標の「事業承継確率」が全国で一番高いスコアだったのは、和歌山県でした。地元にとどまって暮らしていきたい、と考える人の割合が多いのかもしれません。ただ、社長の年齢を示す「社長の若さ」は全国平均を下回っています。これらの結果から、和歌山県は、後継者のめどはついているが、高齢の社長がまだ頑張って会社を率いているケースが多い、という見方ができます。 ── 「社長の若さ」が一番だった都道府県はどこですか? 北村 沖縄県が全国でトップでした。ただ、「事業承継確率」は全国のなかでも最下位です。当社の支店による調査結果も含めて考えると、沖縄県には「他の都道府県から沖縄県に移住した人が起業する」、というキャリアモデルが存在すると見られます。 ── 従業員への利益の還元率を示す「従業員還元度」が低いと、今後の労働力不足が懸念されそうです。 北村 「従業員還元度」が低いままだと、労働者を確保しにくくなる可能性があります。とはいえ、増収企業の割合を示す指標の「増収企業の割合」や、県外への販売割合の高さを示す「県外への営業力」が低い都道府県では、従業員への利益の還元もなかなか難しいのかもしれません。福井県や石川県は、この「従業員還元度」が比較的高いんです。よく「北陸は住みやすい」「従業員にやさしい」という話を聞くことがありますが、社員にはしっかり還元している企業が比較的多い様子がうかがえます。
各都道府県のビジネスの特徴を知る意義は?
── これらデータの分析結果をどう活用すれば良いでしょうか。 北村 自治体では、政策の立案に活用できます。たとえば、ある自治体が経済施策を立案しようとした場合、「増収企業の割合」が低いなど、自分たちの特徴をあらかじめつかめますので、特徴に応じてより的確な施策を立案し、実施できます。民間企業では、出張前に、自分がたずねる都道府県のデータにあらかじめ目を通せば役に立つでしょう。 ── 各都道府県のビジネスの特徴を知る意義は何でしょうか。 北村 私たちがそれぞれ暮らしている地域の経済は、他の地域の経済とつながって成り立っています。たとえば、徳島県は大阪府と経済的なつながりが強い、とされています。ともに繁栄を目指すためには、両府県のビジネスパーソンが互いに相手の特徴を理解して、うまく付き合っていくことが必要でしょう。この狭い日本の国土で生きていくためには、そうした姿勢が大切だと思うのです。
(取材・文:具志堅浩二)