[関東]「アルビが一番成長できる」と感じた練習の衝撃と試合の楽しさ。新潟内定の桐蔭横浜大MF笠井佳祐が求め続けるのは自身とチームの確かな結果
[10.5 関東大学L1部第16節 中央大 1-0 桐蔭横浜大 中央大学多摩キャンパスG] 【写真】「金髪美少女」「一段と可愛く…」「アカンやつ」元なでしこ岩渕真奈さんのモデル姿に称賛殺到 プロの世界で戦っていくためには、まだまだ足りないものがあることは重々承知している。それでも、白鳥のエンブレムの付いたユニフォームに袖を通して、一度ピッチに立ってしまったからには、もうそれ以前の意識には戻れない。もっと努力して、もっと成長して、いつか必ずビッグスワンのスタンドを、自分のゴールで沸き上がらせてみせる。 「来年のためにも、今年はこのチームでしっかり活躍してからアルビに行きたいなという気持ちがあるので、それをゴールという結果で残せたらいいなと思っていますし、今はなかなか結果として出ていないですけど、もっと自分自身を見つめ直して、もっと成長していかないとなと思います」。 来季からのアルビレックス新潟加入が内定した、中盤より前のポジションであればどこでも高水準にこなせる桐蔭横浜大のナンバー7。MF笠井佳祐(4年=関東一高)はプロの練習参加や公式戦の舞台で味わった高い基準を自らに突き付けながら、とにかく目に見える結果を追い求めていく。 「今日のゲームに負けたのは、決め切るところで決め切れなかった自分のせいだと思います」。終わったばかりの試合を笠井は悔しそうに振り返る。関東大学1部リーグ第16節。中央大のホームグラウンドに乗り込んだ桐蔭横浜大は、前半から押し気味にゲームを進めながらも、ゴールを奪うまでには至らない。 笠井は最前線に入ったFW渡邊啓吾(4年=旭川実高/湘南内定)やシャドーで並んだMF落合遥斗(4年=桐生一高)とスムーズな連携を披露する場面も創出するものの、なかなかフィニッシュは取り切れない中で、後半15分に失点すると、以降はチャンス自体の数も減少していく。 「自分たちが焦って単調な攻撃になってしまって、最後の最後で判断を変えられなかったりもしましたし、良くない流れになってしまったので、やっぱり前線の選手が先に点を獲れなかったのが痛かったですね」(笠井)。 結局、最後までビハインドを跳ね返せずに0-1で敗戦。「今日勝てば上位に食い込めるところで、こういうゲームをモノにできる代は強いですし、今年は真ん中の順位が詰まっていて、なかなか1試合1試合の勝点が大事な中で、勝ちを落としたのは個人としてもチームとしても苦しくはありますけど、下を向いている時間はないので、切り替えて全員でやっていくしかないと思います」。何とか必死に前を向こうとする姿勢が印象的だった。 4月18日。アルビレックス新潟は笠井の加入内定リリースを発表する。いくつかの選択肢もあった中で、このチームへの加入を決断した経緯を、本人はこう明かす。「最初にオファーを戴いたのがアルビで、去年の夏にも練習参加させていただいた時に、ポゼッションの練習があったんですけど、『こんなに取れないことがあるんだ……』と思って、『この環境にいたら凄く上手くなれるな』と思ったんです」。 「今年のキャンプに行った時は『自分が一番下手だな』と感じましたね。他の中盤の選手は凄くいろいろなことを考えていましたし、そういう方々からいろいろアドバイスを戴いたり、自分から聞きに行ったりする中で、何チームか練習には行かせてもらいましたけど、『ここが一番成長できるな』と思ったので、アルビさんを選ばせてもらいました」。 練習参加時には、もちろんすべての選手のクオリティに衝撃を受けたが、とりわけインパクトがあったのは、ボランチのポジションでプレーしていた2人の選手だった。「ヤンくん(高宇洋)と(秋山)裕紀くんが相手の2ボランチだったんですけど、本当にボールが取れなくて……。みんなパスを出すタイミングも上手いですし、パスの強弱で会話しているような感じでした」。 特に秋山からは多くのアドバイスをもらったという。「裕紀くんは凄くいろいろなことを考えていて、『ここに立っていたら相手が来るからこっちが空くし、相手がこっちに来たらここのパスも切れるし』みたいなことを聞いたりしたことで、サッカーを考えながらプレーするようになったのが一番の変化だと思います」。高いレベルを教えてくれた“先輩”の存在もあって、この1年近い時間の中で思考する力が成長してきたことは、笠井もハッキリと感じているようだ。 5月22日。「2024JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド3回戦」。ブラウブリッツ秋田とアウェイで対峙した一戦に、特別指定選手の笠井はスタメンの1人としてピッチへ送り出される。「最初は緊張して硬くなってしまったんですけど、やっぱり周りも上手いですし、ボールも来ますし、途中からは凄く楽しかったですね」。 後悔の残っているシーンがある。前半33分。右サイドを切り裂いた松田詠太郎のグラウンダークロスを受け、笠井はゴールに背を向けながらヒールシュート。素晴らしいアイデアとテクニックが融合した一撃だったが、ボールはわずかに枠の左へ。デビュー戦での初ゴールは幻と消えた。 「凄く楽しかった印象が強かった中でも、チャンスを決められなかったので、今日もそうですけどペナルティエリアの中に相手の枚数が多い中で、一工夫入れて、相手を剥がして点を獲れないと上には行けないと思いますし、数少ないチャンスを決められるようにやっていかなきゃなとは凄く思いました。正直、凄く点を獲りたかったです」。今季はよりゴールという結果にこだわっている陰には、この1試合の経験も小さくない影響をもたらしているようだ。 2年前のインカレ決勝では終盤に同点ゴールをマークし、結果という形で貢献した日本一をみんなで喜んだ。先輩にも同期にもJリーグ入りを果たしたタレントが居並ぶ中で、練習から切磋琢磨することで着々と進化を続けてきた。そんな大学サッカーも気付けばもう残された時間は3か月あまり。新たな世界へと足を踏み入れる前に、やるべきことはもう決まっている。 「いろいろなチームに練習参加できたのは、桐蔭の安武さん(安武亨監督)をはじめとするスタッフ陣が、『いつでも試合に帰ってくれば、出ていいよ』という自分の受け入れ態勢を整えてくれていたからだと思うので、2年前に日本一を獲ったように、最後はインカレにしっかり出て、結果という形で恩返ししてから、プロに行きたいなという想いは強いです」。 桐蔭横浜大が誇るユーティリティな才能。笠井佳祐はいつだって自身とチームの結果を追い求めながら、さらなるステップアップに必要な成長の種を、目の前のピッチの中で探し続けていく。 (取材・文 土屋雅史)