バルサのカンテラ加入・西山芯太を育てたFC PORTAの育成哲学。学校で教えられない「楽しさ」の本質と世界基準
小学校4年生で、バルセロナの下部組織に飛び級で加入した西山芯太くんは、一体どんな環境でその才能を磨いたのだろうか。そのキャリアを形作ったクラブの一つが、小学生時代にプレーしていた神奈川県のFC PORTAだ。強豪Jクラブの下部組織などに子どもたちを送り出す同クラブの指導方針や哲学とは? 同クラブの羽毛勇斗監督に、芯太くんと同じキャリアを夢見る子どもたちへ向けてのアドバイス、そして留学ビジネスの現実についても話を聞いた。 (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=FC PORTA)
世界で戦うために必要な「マインド」の引き出し方
――世界と戦う選手を育てるために、FC PORTA(以下、ポルタ)が大切にされていることを教えてください。 羽毛:ポルタが掲げるビジョンは、「Stay Hungry(貪欲であれ)」「圧倒的な個の育成」の2つです。その土台となるのが、メンタルや考え方だと思っています。それが身につかないと、何を教えても限界があると感じています。もちろん技術や戦術的なことは教えますが、うまくいかなかった時には、親やコーチのせいにすることもできる。でも、そこで自分に矢印を向けられる選手は、「どうすればいいか」を考える力がつきます。だから、選手たちには「練習できついことにも向き合い、試合でうれしい思いをするか、練習を楽にやって試合できつい思いをするのとどっちがいい?」と、よく聞くんです。楽しい練習だけでトップトップでやれるとは思わないので、世界で戦えるような考え方やマインドを育てることは特に大事にしていますね。 ――そのメンタリティを育てるために、子どもたちに声をかける際にはどんなことを大切にされていますか? 羽毛:例えば「ドリブルやパスをもっとうまくなりたい」「リフティングができない」と子どもたちが言ってきたら、「どれくらい練習したの?」と聞いて、練習方法を見せてもらうんです。そうすると大抵、「それは俺たちの基準じゃない。これぐらいの量じゃ難しいから、もっと考えてやらないといけない。それを全部やって、それでもうまくならなかったらもう一回聞きにおいで」と言うことになります。結局は「自分」ですから。ポルタの選手は元気があるね、気持ちが強いね、とよく言われるのですが、そういう考え方も影響していると思います。 ――子どもたちの積極性や気持ちの強さを引き出すために、他に工夫されていることはありますか? 羽毛:ポルタのコーチ陣が、そんなにコーチっぽくないというか、自分のように一般的には「変わっている」と言われるタイプのコーチしかいないんですよ(笑)。選手とコーチ、という壁がないので、どんなことでも対等にしゃべります。 子どもは周りの大人に影響されるので、「こういうのもしゃべっていいんだ」という感覚になれば、なんでも話すようになります。ただ、集合する時などはガラッと空気を変えています。そういうメリハリや、メンタルの強さは持ってほしいですし、そういうクラブの考え方や基準は親御さんにもその都度伝えるようにしています。 ――「なんでも話す」というのは、プレーや戦術のことも常にディスカッションしている感じですか? 羽毛:そうです。例えば、練習や試合でうまくいかない時に最初の2、3分は「自分たちで何がうまくいっていないのか話して」と課題を出すんです。そうやって自分たちの考えを言葉にしてもらった上で、まだ考えの引き出しが少ないので、コーチ陣がそこに少し上乗せして伝えていく。そうすると「なるほど」と理解できて、それをやってみたりする。そういうやりとりを繰り返しながら、常に考えて、自分の言葉で話させるようにしています。