バルサのカンテラ加入・西山芯太を育てたFC PORTAの育成哲学。学校で教えられない「楽しさ」の本質と世界基準
学校では教えられない「楽しさ」の本質
――ジュニア年代におけるトーナメント形式の大会については、試合の勝敗にこだわりすぎることや、出場試合数に格差が生まれて多くの選手に出場機会が確保できないことなどの議論がありますが、羽毛監督はどのように考えていますか? 羽毛:ポルタは「積み重ねてきたものをどれだけ逆算して試合で発揮できるか」を大切にしています。そこで、緊張感のある試合と緊張感がない試合だと、出せる力が変わってくるんです。例えば、練習試合でめちゃくちゃ良くても、重要なゲームになるとできない選手もいます。ただ、トップレベルにいったら重要なゲームが増えていくので、「プレッシャーを感じないぐらいになってほしい」と考えています。そのためには、自分たちと同じか、ちょっと上のレベルの相手と戦い続けないと最大出力が出ない。そういう意味では、「トーナメントかリーグ戦か」ということよりも、「5年生はこれくらいできるようになってほしい。6年生では……」と、FC PORTAの基準を設定した上で、いろいろな大会に参加しています。もちろん、目の前の試合は必死に勝ちにいきますが、結果よりも「基準に達しているかどうか」を重視しています。だからこそ、勝っても課題を抽出して追求していくので、子どもたちはトーナメントでもリーグ戦でも「勝てばいい」という感覚は持っていないと思います。 ――10歳以下の年代で、サッカーの楽しさの本質を理解するためにはどんなことが必要だと思われますか? 羽毛:「楽しい」の基準はみんな違っていて、公園で遊ぶことが楽しい子もいれば、真剣に必死にやるのが楽しい子もいて、クラブでその基準は一定にしないといけません。FC PORTAとしては、真剣にバチバチ1対1を戦って勝ったり負けたり、「ここで負けたらやばい」という緊張感、ユニフォームが真っ黒になってでもサッカーが大好きだと思えることなどが競技においての楽しさだぞ、と教えています。逆に、周りに文句を言ったり、試合中ずっと歩いている選手がいたら、「それはめちゃくちゃダサいよ」とはっきり言います。「友達としゃべったり、練習をラクにやることが『楽しい』なら、ポルタじゃないよ」と伝えて、子どもたちの基準を変えていきます。そういうことは学校で教えられないことだと思いますから。 ――羽毛監督が指導していて、やりがいを感じるのはどんな時ですか? 羽毛:芯太がうちに入る前から「世界のトップレベルで活躍するような選手を輩出したい」という思いがありました。実際に芯太がそれを叶えてくれたことはうれしいですし、他にもJリーグの強豪クラブの下部組織に勝ったり、選手が目指していたチームのセレクションに受かったりした時もうれしいです。 でも、本当に目指さなければいけないのはそういうことではないと思っていて。大事なのは「世界で活躍するために、逆算したら16、17、18歳の時はどうなっていなきゃいけない」とイメージして、そこを目指すことだと思っています。その点では、芯太がどんどん基準を塗り替えていくので、自分たちも負けていられないというプレッシャーが常にありますし、将来、世界で活躍するようになった選手たちが「ポルタではこう言われていたな」と思い出して逆境を乗り越えてくれた時に、本当のやりがいを感じると思います。