すすきの名物「バニーガールのお店」の火災で見えた歓楽街と火事の〝切れない関係〟
SNSで「楽しいことするよ」と
「ガラスがパーンと割れて、見ると窓から火が出ていた。階段から体に火の粉がついた人が、『助けてくれ!』と叫びながら走って降りてきたので、通行人が布や衣服で必死にたたいて払い落としていた」(現場に居合わせた人) 【見えちゃってるよ】すごい…路上から店内のバニーガールが見えることで有名なすすきののお店 11月26日午後3時18分、札幌・すすきのの雑居ビル内のガールズバーで突然爆発が起き、激しい炎がビルを包んだ。店内にいた41歳の男性が意識不明の重体、30代と50代の男性客と20代の女性従業員が病院に搬送されたが全身やけどの大ケガをした。当初この4人と見られた負傷者は、その後1人増えて5人となった。 このうち意識不明となっている41歳の男性が、作業服のような服に帽子とマスクという〝作業員〟のような姿に変装し、ガソリンと思われる液体を入れたバケツを持ち込んで店内にまき、ライターで火をつけたという。 「ケガをした20代の女性従業員と、この男性は同棲していたようですが、別れ話で揉めて女性従業員は11月7日に警察に相談、その後親族宅へ避難していました。 警察は男性に口頭で注意していたようですが、男性はその後も女性従業員に執拗に『会いたい』とLINEを送ったり、ライブ配信で自殺をほのめかすなどして通報されていました。26日の火災発生直前にも男性はSNSで『楽しいことするよ』と犯行をうかがわせるような内容を投稿しています」(全国紙社会部記者) 現場となったのは、人や車の通りが多いすすきのの中心部であり、すすきののシンボル「ニッカウヰスキー」のネオン看板がある〝すすきの交差点〟から南へ100メートルほどの商業ビル。他のビルに囲まれた地下1階、地上6階建ての狭い雑居ビルで、バーや風俗の案内所などが入り、火元とみられる2階と3階にはバニーガールコスプレで知られるガールズバーが入っていた。 ◆「歓楽街と火事」の関係 社交飲食・風俗業界では、バニーガールコスプレ専門店は平成の後半ごろから増えはじめた。セクシーかつ高級感のある衣装が持つVIPなイメージから、現在も全国規模で人気がある。バニーガールの衣装はスタイルのいい女性でないと似合わない。必然的に女性は美形のみがそろう。 今回事件のあった〝バニーガール・ガールズバー〟は札幌市内に5店舗を展開するグループ店『ミリオン』の駅前通本店である。「札幌で最も有名」ともいわれる、すすきのを代表する名物ガールズバーであり、系列店である『南4条通店』と『5条通店』は路上からガラス越しにバニーガールのセクシーな姿が見えることで名物的な存在となっている。 ’15年6月の夕方に、この『ミリオン5条通店』を見に行ったことがある。店の中から高齢の男性客を見送りにバニーガール姿の若い女性が店頭の路上まで出てきていて、そのセクシーすぎる姿に目を奪われた。同時に路上からバニーの姿が見えることが大きな宣伝効果をもたらしていることを実感し、「道理で流行るわけだ」と納得したものだ。 『ミリオン』の登場以後、同様の〝バニー&ガラス張りの店〟が全国各地に続々と登場し、消えていった。池袋駅北口にあった店は’23年2月に摘発されている。摘発の理由は、風俗営業の許可をとっていないにもかかわらず、女性従業員に客の接待をさせた疑いであった。 すすきので火災があった3日後の11月29日、東京・池袋でもビル火災が起きた。昔から歓楽街では火事が多い。背景には「建物が古い」「消防設備の不備」「可燃性のゴミやタバコの不始末」などの要因がある。火災が起きたすすきののビルは、屋外の階段がなく、避難するための階段が屋内階段1つしかなかった点が問題視されていた。’01年9月に発生した歌舞伎町ビル火災は避難通路の確保が不十分であったため44名の死者を出す大惨事となった。また、’17年12月に死者5名を出した大宮風俗ビル火災では建て替えのできない風俗店の老朽化の問題が指摘されている。だが、今回の火災で最も象徴的だったのは「男女の揉めごと」が発端だと思われる点だろう。 自暴自棄になった客が、女性への〝復讐〟や〝逆恨み〟から店に放火するのは〝あってはならないこと〟である。「ビルや建物の防火・防災管理体制の強化」(ハード面の対策)と「孤立している人たちの居場所を作ることによって〝絶望犯罪〟を減らし、周りを巻き込む〝拡大自殺〟をなくすこと」(ソフト面の対策)を組み合わせて実施することが必要なのは言うまでもない。 取材・文・写真:生駒明
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