唐十郎「主演」ドキュメンタリーを追悼リバイバル、17年ぶり上映…大島新監督「まさにシアトリカルな人」
今年5月に亡くなった劇作家・演出家・俳優の唐(から)十郎(じゅうろう)を追悼して、2007年のドキュメンタリー映画「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」がリバイバル上映される(東京・ポレポレ東中野で12月14日から。以降、各地で順次上映)。公開から17年がたったが、同作は今も鮮烈、いや、いっそう面白くて刺激的。芝居という「虚構」をもって人間の「真実」を表現する唐たちの本質をつかまえるため、大島新(あらた)監督が凝らした仕掛けも見逃せない。リバイバルを前に、大島監督に同作について改めて語ってもらった。(編集委員 恩田泰子、敬称略) 【写真】唐十郎さんの元妻は「アングラの女王」…2021年に死去
唐と劇団員の尋常ならざる情熱
「シアトリカル」は、2007年の春公演に向けて尋常ならざる情熱を傾ける、唐と劇団員たちを約半年間にわたって記録した作品だ。芝居作りに対する唐の「偏執」と、唐のもとで芝居の道をひた走る劇団員の営みをありありととらえている。
「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020年)、「香川1区」(21年)、「国葬の日」(23年)など、現代日本の姿を浮かび上がらせるドキュメンタリー映画で話題を呼んだ大島監督が、最初に手がけた劇場用作品でもある。第17回日本映画批評家大賞ドキュメンタリー賞受賞。タイトルになっている言葉「シアトリカル」は、「演劇的な」「芝居じみた」の意だ。
いつも自分を演じているような…
大島監督は1969年生まれ。「20代から30代半ばにかけて、ずっとテレビで人物ドキュメンタリーを撮ってきた」。それらの仕事の中で初めて、「本質に迫れていない、撮り足りない」と感じたのが、唐だったという。だから映画で改めて迫った。
「カメラがあると、一般の方であっても多少よそゆきのおしゃべりになったりするのは当たり前。取材されることに慣れている著名な人であればあるほど、撮影用の顔になるのは全然不思議ではなかったんですが、唐さんの場合、ちょっとそれが異常というか、別にカメラがあろうとなかろうと、いつも自分を演じているような……。在り得るべき唐十郎像みたいなものがあって、ご本人も自覚していないけれどそうなっちゃっているような印象が強かったんです」